日本人が知らない米国「保守派」の本当の顔 偏った報道では浮かび上がらない普通の人々
突然だが、銃をプレゼントされたら、あなたはどう反応するだろうか? しかも義母から。そんなバカなことがあるワケない、と思うだろうが、これは私の実体験だ。米国人と結婚して、米国に移民した記念に、と彼女がプレゼントしてくれたのだ。「なんてクレイジーな家庭に嫁いだんだ」と思うかもしれない。
しかし、義理の娘である私との関係も良好で、普段接する際には何の問題も起こらない。実際、義母は家族思いで優しいし、コミュニティへの奉仕も欠かすことはない、とてもフレンドリーで親切な人だ。困ったことはただひとつ。彼女が少々過激な保守派であることのみだ……。
「アメリカは、思っていた国とはまったく違っていた」――これが、過疎地を含む米国6州で実際に暮らし、短期滞在を入れれば18州を見てきた感想だ。2010年に米国に生活拠点を移すまでは東京でビジネスを展開し、米国企業とも仕事をしていたため、私はしょっちゅう出張で訪れていたこの国を「よく知っている国」と思い込んでいた。しかしそれは単なる頭でっかちな驕りでしかなく、実際にはこの国の本当の姿を、理解していなかったのである。
特に理解できなかったのは、米国が驚くほど「保守的」という事実だ。おそらく多くの日本人が知る「アメリカ」は、グローバル経済を重視し、社会的少数派や弱者の権利を重んじるといった、メディアが報道する「リベラル」な米国に近いだろう。しかし、少しでも都市部を離れると、米国のリベラルな側面は、途端に影をひそめる。
郡レベルで見ると米国は圧倒的に保守的な国
確かに人口的にみると、リベラルと保守は半々なのかもしれない。しかし地理的に米国を見ると、米国は保守だらけだ。リベラル傾向にある人は、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ボストンなど、沿岸都市部を中心とした限られた主要都市に集まっている傾向が強く、そのほかの地域はほぼ保守傾向が強い、と言っても過言ではない。
その証拠に、2016年の大統領選挙を州ごとではなく、郡ごとに分けた統計でみると、保守、つまり共和党のドナルド・トランプ大統領が圧勝した地域は、全3141郡のうち3048郡にも上る。地図にしてみると、米国の大部分が共和党のシンボルカラーでもある赤に染まるのだ。もちろんそのときどきの選挙によって、数字自体は変わる。しかし、バラク・オバマ前大統領が圧勝した2012年の大統領選挙でさえも、郡ごとの集計に注目すると、80%近くが共和党のミット・ロムニー候補を支持していたことがわかる。
「リベラルvs.保守」に分断された米国を語るとき、世間では「トランプ支持なのか否か」という点にどうしても焦点がいく。しかし、米国における保守は、トランプ大統領の支持者という以前に「保守という思想の支持者なのだ」ということを理解する必要があるだろう。
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