日本人が知らない米国「保守派」の本当の顔 偏った報道では浮かび上がらない普通の人々

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当然「勘弁してくれ」と思った。相当困惑した顔をしていたのか、私の拒否反応は彼女にはすぐにバレてしまった。すると彼女は言った。「人を殺すのは銃ではなく人間。銃はあくまで護身用なのだから子どもを守るためにも、人が大勢いるところに行くときには持ちなさい。銃問題とかいうけれど、アイスランドをごらんなさいよ。暴力犯罪がほとんどない平和な国よ。それは国民の30%以上が銃を持っているからでしょう」。

ここでは銃が良いか悪いかの議論はあえてしないが、今でも銃のプレゼントには、困惑しかないし、持ちたいとも思わない。しかし、保守を中心に、銃保持は大切な権利であるという主張があるのは事実である。保守にかぎらず米国の一部には、白人至上主義があることも、また事実だ。

しかし、義母のような極端な例をみて、それらを「保守の特徴」ととらえることは、間違いだ。周囲には保守派の友人もたくさんいるが、彼らのほとんどは銃には反対しているし、リベラル同様にマイノリティへの差別には反対だ。不用意で差別につながるような言動をする人など、ほとんど見かけない。

リベラルと保守の違いとは?

人工中絶の問題、税金への考え方、不法移民保護の問題、同性愛への寛容性など、保守とリベラルには根本的にまったく違うことがたくさんあるが、いずれの違いに対しても、決めつけや極論で結論づけようとするのは危険だ。保守の中にはリベラル的価値観も大切にする人はいるし、リベラルであっても保守的価値観を大事にする人も大勢いるのである。

では、そもそもリベラルと保守の基本的な違いとはいったい何なのだろう。リベラルと保守では大事にしたい「自由」の概念がだいぶ異なる。たとえば、リベラルというのは「多様性は尊重する」ことが基本だ。リベラルな価値観をもつ人にとって、国境を越えた団結や、性差を超えての平等を得る自由は、とても尊いものといえる。

同時に米国におけるリベラル主義には、「自由放任にすることで、人々が不利益を被ったり、不自由になったりするのは本末転倒」という考えがある。だからそれを補う対策として、公権力の一定の介入を認めるという流れがあるため、社会福祉の充実や環境保護などにも熱心になる傾向が強くなる。オバマ前大統領が、社会的弱者への支援を重要視したのも、彼がリベラルそのものの価値観を大切にしたためだ。

一方、保守は政府の過度な介入や、社会全体に大きな影響を与えかねないグローバル企業などが、自分たちの伝統的価値観や、生活をコントロールすることを望まない。彼らが望むのは自分の住む州や地区の自治の自由である。

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