発覚!おぞましい「ブラック保育園」の実態 「保育園不足」に悩む自治体も事実もみ消し?

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さらに、A社を退職したある保育士の話によると、みつこさんの園以外でも職員の架空登録と補助金の不正受給は行われていた。自治体の監査があるときだけ、周辺の園から保育士がかき集められ、偽装したシフト表も作られていた。

「待機児童ゼロ」目指す自治体は、強く出られない

保育園の監督責任は自治体(市区町村)にあるが、特に待機児童ゼロを目標とする自治体は事業者に甘い。A社系列の保育園が認可園化されるにあたって、目黒区の「文教・子ども委員会」の議事録(2016年10月12日)には、A社の問題をめぐる区議と保育課担当者とのやり取りが記されている。

区議が「不当解雇の問題を見ていくと、要は不正受給、架空保育士の問題が出てきているが、目黒区で今回認可する保育園では、そうした架空保育士の問題はないんでしょうね」と念押しするが、保育課担当者は「そういった問題はない」という返答を繰り返している。ただ、実際にはこの小規模園でも実際にいない保育士の登録があったことが確認されている。

自治体には園を簡単に営業停止にはできない理由がある。保育の受け皿が突然なくなると、しわ寄せは園児や保護者にいくためだ。どうしても園の職員が足りない場合など、やむを得ず自治体職員が「見守り」として保育に入らざるを得ないこともある。

こうした事情が運営会社を増長させるのは言うまでもない。「ここまでなら自治体から補助が得られる」と、悪質な事業者が自治体の足元を見て次々と参入しているのだ。

A社も拡大路線の事業者の1つであり、保育士の採用が間に合わないにもかかわらず、次々と新規保育所をオープンさせている。

A社の元保育士は次のように語る。「公立の園でも、民間の園でも子どもの命を預かっているのは同じです。それなのに、公立の園だと1歳児4人に保育士1人など、手厚い配置になることがある。民間だと1歳児6人に保育士1人と、『最低基準』のままです。子どもがウンチしていてもオムツを替えられなくて『ちょっと待ってて』と言わなくてはいけない。切ないです。将来の日本を背負っていく0歳・1歳の子どもたちが、人として大切に扱われていないのはおかしい」と訴える。

「自治体が認可している園なのだから、ちゃんと園に入って実態を確認するべきです。そうしないとA社はギリギリのところをすり抜けながら、これからも園を拡大していくと思います」。

大川 えみる 保育ライター
おおかわ えみる / Emiru Okawa

西日本の民間認可保育園の元園長。保育士・幼稚園教諭を養成する短大・大学の講師を歴任。園長と教員の経験をもとに、保育現場から社会の動向を読み解く。「保育士給与増額署名」呼びかけ人。日本保育学会、日本乳幼児教育学会会員。各地で就職セミナー、保育者研修なども行う。著書に『ブラック化する保育』(かもがわ出版)、教材DVDに『事例で学ぶ!保育トラブル111分完全密着解決マニュアル』『保育のブラック化をこえて』(ともに医療情報研究所)などがある。公式ブログ「大川えみるの保育日誌」

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