発覚!おぞましい「ブラック保育園」の実態 「保育園不足」に悩む自治体も事実もみ消し?

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同じ市内にあるA社系列の保育園で、女性保育士が、園児に対して虐待ともとれる行為をしていたというのだ。

その住民の話によると、近隣の公園で課外活動をしていた際、園児の1人が泣き出したが、付き添いの保育士が「そこでずっと泣いていなさい」と泣かせ続けたのだという。

同じ保育士はほかにも問題行動を起こしていた。「グーチョキパーで何作ろう」という手遊び歌があるが、その保育士は「グーとグーでパンチ!」と園児を叩いていたというのだ。そして園児がよろけると、ふざけた様子で「よろけてるー、お母さんには見せられないけれどねえ」と笑ったという。

その様子を見て「あれはなんだ?」と思った住民は、保育士のポロシャツに書かれた社名とマークを頼りに、みつこさんの保育園と区役所に問い合わせた。

昼寝できぬ子に「動いちゃだめ!」と脅し

さらに、お昼寝の際、寝られない子はおんぶなどして他の子を起こさないようにするのが一般的だが、この保育士は「動いちゃだめ!」と子どもを脅すことで静かにさせていたという。

こうした事実を把握したみつこさんは、大規模園の職員たちとすぐさま市の保育課に通告。翌週に査察が入った。

だが、A社はこうした虐待の事実を揉み消そうとした。この大規模園にはウェブカメラが設置されており、市はA社に対してそのデータを確認して報告するように指導。すると、A社本部は「音声がなく、映像だけなので虐待かどうかわからなかった」と報告(2017年2月7日のみつこさん側の裁判資料による)。結果、市はA社の報告を聞いただけで虐待はなかったと判断した(のちほど、業者がカメラの状態を確認したところ、スイッチすら入っていなかったことが判明した )。

A社内で、虐待問題が正面から取り上げられることはなく、それまでみつこさんに相談していた大規模園の職員らもしだいに口をつぐむようになった。保育士の架空登録の問題も、みつこさんらが引き続き市に相談したことで露呈したが、過払いの人件費を返還するだけで手打ちとなった。

そして、大規模園での虐待を通告したみつこさんは、A社本部からも、大規模園の園長からも目をつけられることになった。大規模園の園長からは、園長会や電話口で一方的に怒鳴られることが何度もあり、挨拶をしても無視された。

長時間の残業もあり、みつこさんはストレスで体調を崩していった。固形物を一切食べられなくなり、体重が激減。結果、2015年10月には医師から「適応障害」と診断された。A社本部に診断書を送ったが、会社側は十分に取り合ってくれなかった。

このような状態にあってもなお、みつこさんは自分が抜けると小規模園が立ち行かなくなると思って仕事を休まなかった。翌11月、医師が2回目の診断書に「大規模園の園長とは、別の人がやり取りをするように」と書いてようやく、他の保育士に対応が交代され、少しずつ体調は回復していった。12月には、A社の社長から「来年もよろしく」と声をかけられ、状況はいい方向に向かっているように見えた。

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