仏教主義の男子校がバイオリンで教える本質 東京の進学校「芝」の音楽授業

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中1の3学期の授業を見学した。

「この前の授業では音階のチェックをしました。今日のキーワードは音感です。音感という言葉を聞いて、どんなことをイメージしますか?」

鈴木教諭が問いかける。

「絶対音感!」

生徒の1人が即座に呼応する。

「そうだな。音感とは何かを単純に言うと、音を感じる力ね。今日はワンランク鋭い音感をもってこの教室を出て行ってもらおうと思っています」

この日は、音程の「広い」「狭い」という概念をくり返し説明した。それを意識することで音感が鋭くなるという。

ホワイトボードにバイオリンの弦に見立てた線を書く。

「1個目のシールはこの辺にあるとするよね、2個目がこの辺だとすると、3個目はどの辺にある?」

「せま〜い」

「じゃあ、3個目と4個目の間は?」

「ひろ〜い」

「実は、そうなっているんです。音程の広い狭いがわかっていると、みんなみるみるうちに音感が良くなるから、ちょっと意識してみてください。ではバイオリンを出してください」

ピアノ、リコーダー、ハーモニカなどは、正しく入力すれば決まった音が出力されるようにできている。しかし弦楽器の場合、弦のどこを押さえるか、たった数ミリメートルの違いで音が変わる。狙った音を出すためにどこを押さえればいいのか、授業用のバイオリンには目安としてシールを付けてはあるが、正解はない。

いろいろな感覚が一度に鍛えられる

鈴木教諭のピアノの音に合わせ、全員でバイオリンを弾く。「はい、狭いよ」「次、広いよ」と音程の広さ狭さを意識させるように声をかける。

「ボウイングがずれている人がいるよ! 指の動きが全員ぴったりそろうように、周りをよく見てください。もう1回同じことをやりますよ」

ボウイングとは、弓を動かすことだ。上下ふたとおりの方法がある。

「次は、『キラキラ星』いきます。このときも音感を意識してくださいね」

ホワイトボード上のキラキラ星の楽譜を指さしながら、「ここは広いよ」「ここは狭いよ」と確認したり、バイオリンに貼られたシールの位置を実際に確認しながら、音感を鋭くして、正しい音程をとらえることに意識を向ける。

「今聞いていてね、みんなだいぶ音感が身に付いてきた気がするよ」

その後も、クラスを半分に分けたり、リズムを変えたりしながら「キラキラ星」を練習する。ときどき注意を促す。

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