任天堂が「マリカー」を訴えざるを得ない事情 「マリオ」のただ乗りは絶対に許せない

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任天堂はこれまでの交渉や裁判手続に多額のコストをかけていると思われますが、それを回収できる可能性はむしろ低いのかもしれません。任天堂が提訴に踏み切った本当の狙いは、自社のキャラクターの無断使用に対する厳格な姿勢を対外的に示すことにありそうです。なぜなら、任天堂にとっては本業のゲーム事業に派生したキャラクタービジネスの重要性が一段と高まっているからです。

なぜ、このタイミングでの提訴なのか?

任天堂は、2017年3月期の連結純利益について、従来予想の500億円から前期比5.5倍の900億円になる見通しであると大幅に上方修正しました。期末配当も前年同期に比べ260円増配となる380円にすると発表しています。

ところが、これに反して任天堂の株価は下落しています。業績がよく見えるのは円安による為替益が出ているからにすぎず、本業であるゲーム事業が低迷しているからです。

スマホゲームに押され、据え置き型ゲーム機「WiiU」向けソフトが伸び悩んでおり、同期の売上高や営業利益の予想も段階的に引き下げられているのです。

本業の低迷に危機感を持っている任天堂は、保有している米大リーグ球団シアトル・マリナーズの所有権の大半を売却することを昨年4月に発表し、ゲーム事業にてこ入れするための資金にしました。

そして、昨年12月には、これまで積極的に参入してこなかったスマホゲームの分野に「スーパーマリオラン」を投入し、本年3月3日には社運をかけた新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を発売します。

今回の提訴について、自らニュースリリースしていることからも、任天堂が本業の回復に向けて背水の陣で臨むことを広く世界に宣言するパフォーマンスのために提訴したという意味合いがあることは疑いありません。

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