キリンが抱く、“缶コーヒー離れ”への危惧 ペットボトル入り「フレーバーラテ」を投入する事情

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缶コーヒーと、一緒に愛されているタバコの社会的地位が低下してきていることも、見逃せない。仕事の合間の一服に、缶コーヒーを飲むというスタイルは中高年の男性サラリーマンに多かったが、禁煙スペースの拡大、分煙化によって愛煙家の肩身は狭くなるばかり。キリンによれば、直近で缶コーヒーの出荷・販売量に極端な減少傾向はみられないものの、「今の男性サラリーマンが引退して会社に来なくなったときに、缶コーヒーをパタッとやめるようなケースがありうる」(山田マーケティング部長)という危惧を抱く。

キリンがペットボトルコーヒーを出すのは、今回のカフェデリが初めてではなく、かつて、「ファイア ネオ(neo)」というシリーズで展開したことがある。ただし、思ったようなヒットとならず、現在、自動販売機向けの販売は終了している。原因は、「缶コーヒーをそのままペットボトルに詰めただけだった」(山田マーケティング部長)。カフェデリシリーズには、過去の失敗を繰り返すまいとするキリンの反省がある。

ファイアのシェアは国内5番手

それに、もともとキリン ファイアの国内シェアは、「ジョージア」(コカ・コーラ)、「ボス」(サントリー食品)「ワンダ」(アサヒ飲料)、「ダイドーコーヒー」(ダイドードリンコ)に続く国内5番手(7%、2011年、食品マーケティング研究所調べ)。缶コーヒーでの地位向上を狙うよりも、新機軸による需要開拓を進めるほうが、競合との差別化になる。

ただ、カフェでコーヒーを飲むというスタイルを定着させている人が、カフェで売っているようなコーヒーをコンビニや量販店で買いたいと思うかは未知数である。コーヒーは味や飲料感だけではなく、カフェでゆっくり過ごす時間や、コーヒー1杯で確保できるワークプレイスなどを求めて、飲んでいる側面は少なからずあるからだ。そうした要素をはねのけ、狙い通りの成果を収められるか。キリンの新しい挑戦が始まる。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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