スタバで280円のコーヒーを買うと支払いは? 消費増税で「本体価格のみ表示」に変更

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消費増税に伴いメニューの価格表示は税抜きになる(撮影:梅谷秀司)

消費増税を目前に控えた価格改定で、カフェ最大手のスターバックス コーヒー ジャパン(以下、スタバ)が珍しい方針を打ち出した。同社は4月以降、現在の総額表示(税込み価格)から本体価格表示(税抜き価格)に変更する。

現在、主力商品「スターバックス ラテ」のトールサイズは税込み380円(本体価格362円)だが、4月1日以降は「360円+税」と表示され、実際の支払いは388円。「ドリップコーヒーSサイズ」は「280円+税」と表示され、実際の支払いは302円となる。「+税」を見逃して280円を片手に並んでしまうと、会計のときに「302円です」と言われ、慌てて財布の1円玉を探すことになりそうだ。

従来のメニューはどれも税込みで10円単位だったが、4月以降は本体価格を10円単位にそろえるため、消費税を加えるとレジでの支払いが1円単位になる。端数が出ることで釣り銭が増え、レジでのオペレーションに時間を要することも考えられるが、「2年前から自動釣り銭機を導入し始め、全店で導入された。大きく混乱することはない」(広報部)という。

本体価格表示の受け止め方

スタバは今回の表示変更について、「税抜き価格と税込み価格を併記するとメニュー表が見にくい。総額表示にすれば内部要因(本体価格)と外部要因(消費税)のどちらで価格が変動しているかお客様に伝わらない」(広報部)と説明する。

もともと、消費者が値札を見れば支払い総額が一目で分かるようにするため、総額表示が義務付けられていた。だが、昨年10月に施行された時限立法である消費税転嫁対策特別措置法で、2013年10月~2017年3月までは総額表示に加えて、税抜きの本体価格表示も認められるようになった。

これは今後も予定される消費税率の引き上げに際し、値札の貼替え作業など、事業者の負担を軽減する観点から認められたもの。増税対応の価格改定をするのであれば、3月末まで「1050円(税込み)」と表記していた場合、4月以降に「1080円(税込み)」と変える必要がある。

だが、総額表示をやめて「1000円(本体価格)」と変更すれば、15年10月に予定されている消費増税が正式に決まっても、表示を変える必要はない。スタバが「この先の消費税率引き上げも考慮した」というのもそのためだ。

競合のカフェチェーンを見渡すと、タリーズコーヒージャパンの「タリーズ」や、ドトール・日レスホールディングスが展開する「ドトール」は値上げによって4月以降も10円単位の総額表示を維持する方向だ。

外食チェーンではモスフードサービスが総額表示、日本ケンタッキー・フライド・チキンが本体価格と税込み価格を併記する。これらに共通するのは、その場で消費者が支払う価格が分かるということ。時限立法で認められた表示方法とはいえ、セルフ型のカフェや外食チェーンの中で、スタバのように本体価格のみの表示に移行するケースは珍しい。

総額表示と10円単位のメニューに慣れた消費者にとって、今回のスタバの価格表示変更はどのように受け止められるのか。4月以降の消費者の反応が気になるところだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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