文京区は、全国で一番「官能的な街」だった 坂や階段だらけでも「歩いて楽しい街」の理由

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三浦:官能都市ランキングの1位が東京・文京区というのは、一見意外だよね。東京大学があったりして、ハイブラウなイメージだから。

文京区を散歩すれば、古くて味わいのある建物に出会うことができる(撮影:三浦展)

でも、「官能都市」の指標を見てみると、言われてみればそうだなと。湯島天神があるし、こぢんまりとしたおすし屋さんや粋なバーもあって。

ちょっと歩けば台東区に入って、不忍池もあれば、動物園や美術館もある。食事の買い物は御徒町の吉池に行くとか。歩いていろいろなことができる。

歩きやすい街と、歩いて楽しい街は違う

島原: おっしゃるとおりで、文京区の場合、ランキングを出すうえでの8つの指標の中だと、特に「共同体に帰属している」と「歩ける」のカテゴリー偏差値が高いのが特徴なんです。

特に「歩ける」という指標で1位なのは興味深い。というのも、文京区は、東京23区の中でいちばん坂が多い街。階段もごろごろありますよね。

そういう街が、「歩ける」街と評価されているというのは、近代的な都市計画が想定する「快適な歩行者空間」に対して、ものすごく重要なアンチテーゼを示しているように思います。

三浦:歩きにくい場所もあるけど、歩いて楽しいということですよね。ちなみに、私の調査によれば、住みたい街別に街歩き系のサークルに属している割合を出すと、1位が人形町で、2位が谷根千(台東区・谷中、文京区・根津、千駄木)なんですね。実際にも、歩いて楽しい街に住みたい人がこの辺りに集まってきているということはあるでしょう。

三浦展(みうら あつし)/社会デザイン研究者 カルチャースタディーズ研究所主宰。1958年生まれ。1982年に一橋大学社会学部卒。パルコに入社し、マーケティング誌『アクロス』編集室。1990年に三菱総合研究所入社。1999年に「カルチャースタディーズ研究所」を設立。消費社会、家族、若者、階層、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測し、社会デザインを提案している。 著書は、80万部のベストセラー『下流社会』のほか、『毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代』『あなたにいちばん似合う街』など多数。東洋経済オンラインで連載中(撮影:今井康一)

そういう意味では、SUUMOの住みたい街ランキングでいつも名前が挙がる吉祥寺も、歩いて楽しい街。

池があって、自然もあって、ハモニカ横丁はじめとした闇市から発展した飲み屋街もあって、買い物にも事欠かない。文京区と比べて足りないのは、大きなお寺や神社が少ないくらいかな。そして、やっぱりバリアフリーではないね。

島原:むしろ、吉祥寺ほど、車で行動しようとするとストレスがたまる街はないですよね。どこに行っても渋滞していて、中に入れない。あそこに住むとしたら、やっぱり自転車か歩きですよね。

誰にでも開かれているバリアフリーはそれなりに必要なもので、ショッピングモールはこれを重視した造りになっている。ただ、誰もが歩きやすいからといって、人が歩きたくなる街になるかというと、ちょっと違うと思うんですよ。

三浦:本当に歩けなくなったらやっぱり不便なんだと思うけれど、だからといって文京区の高齢者が不幸を味わっているわけではなくて、その逆なんだね。なんとかいつまでも歩いていたい人にとっては、歩きたくなる街かもしれない。

島原:たとえば南イタリアの街なんかも、とても階段や坂が多くて、おばあちゃんたちが文句を言いながら歩いています。でも、彼女たちが街にネガティブな印象ばかり持っているかというと、違うでしょうね。

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