金正男暗殺、ミサイル発射で暴走する北朝鮮 米国に承認されない金正恩委員長の焦り

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では、トランプ米新政権は、北朝鮮との関係において新しい政策を打ち出すのか。新政権における北朝鮮問題の優先度は低い。トランプ大統領は選挙期間中から、経済・貿易、不法入国者、移民・難民、テロ、過激派組織IS(イスラム国)、中東、ロシアとの関係を重視しており、政権成立後もその姿勢はそのまま維持されている。

選挙期間中の2016年5月17日、トランプ氏はロイターとのインタビューで、金正恩委員長と話し合う用意があると述べていた。この発言について、北朝鮮側は積極的に反応しなかったと報道されたこともあったが、それはトランプ氏の突然の発言の真意を測りかねていたためで、その後、北朝鮮の政治局員である楊亨變・最高人民会議常任副委員長は、トランプ氏の発言を積極的に評価した。北朝鮮の反応として当然だ。

トランプ氏はその後も「北朝鮮と対話をして何が悪い」という趣旨の発言をしたことがある。同氏は失礼ながら外交問題を現在学習中で、北朝鮮と対話することについて、今も同じ考えか、あらためて確認する必要はあろう。トランプ政権が北朝鮮と対話を始めれば、過去のブッシュ政権もオバマ政権もできなかったことを実現できる。

中国の圧力を期待する米国だが…

一方、ティラーソン国務長官は上院の対外関係委員会での承認審議で、「もし中国が国連決議を遵守しないのであれば、米国としては中国が決議を順守するよう強制するための方策を考えるべきだ」と発言した。これは「米国は北朝鮮と直接の対話をしない。中国が北朝鮮に圧力を強化すべきである」というこれまでの方針と変わらない。

ティラーソン長官は、新政権の中で地位を固めつつあると見られているが、外交問題について理解がまだ十分ではないのだろう。当面、これまでの方針をなぞりつつ振る舞うのはやむをえないのかもしれないが、少なくとも、中国はどのようにがんばっても米国に代わって北朝鮮を承認することはできないことを、明確に理解する必要がある。

トランプ政権がはたして実際に北朝鮮との対話・交渉に乗り出すのか。まだ即断できないが、日本は北朝鮮の非核化を米国以上に必要としている。国連決議の完全履行を目指すことも必要だが、米国が北朝鮮と対話をし、交渉の可能性を追求するよう説得することも、日本の役目なのだ。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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