同首脳会談ではまだ不在だったスティーブン・ムニューチン財務長官も、13日にようやく米議会で就任が承認された。ムニューチン財務長官の就任によって、財政政策の策定が今後急速に進展する可能性もある。2~3月中にトランプ政権から議会に提出される予算教書の内容に、今後市場関係者の注目が集まるだろう。
また、インフラ投資を促進するための「インフラ投資銀行」について、トランプ政権のスタッフで最初に設立の方向性を示したのがムニューチン氏だったことを考慮すれば、ムニューチン財務長官の就任によって、今後、インフラ投資銀行の構想は具体化すると考えられる。
米国の景気拡大とインフレでドル円は120円へ
トランプ大統領は2月9日、法人税制の見直しについて「驚異的な」計画を2~3週間以内に発表すると述べた。スパイサー報道官も、「1986年以降で最も包括的な法人税制・個人所得税制を作成中」であることを明らかにしている。同報道官は、「われわれが海外との競争に直面しているのは米国の税制が理由だ。米国の税制は、国内にとどまりたくない企業に有利なもので、大統領もその点を認めている」との見解を示した。
これを見るかぎり、現在策定中の税制案は、ライアン米下院議長が支持している「国境税調整」をベースにした内容になるのではないかと思われる。共和党案の国境税調整は、(1)米国への輸入品に対して一律20%の税金を課す、(2)米国から輸出して得た利益については課税が免除される、(3)国内から上がった利益にのみ20%の法人税がかかる、という内容で、事実上の関税引き上げと、輸出の免税、法人税率の引き下げ(35%→20%)となる。
これに加え、所得税減税なども検討されており、実現すれば米国に景気拡大とインフレをもたらす公算は大きい。米金利上昇に伴い、今後緩やかにドル高・円安が進行すると見ており、ドル円の2017年末予想値は120円に置いている。
日米首脳会談の結果をみれば、米国が日本の為替政策を再び直接的に批判し、ドル安誘導する可能性は当面低いと想定される。しかし、それでもトランプ政権の政策によって、間接的に円高が進行するリスクもあるため、警戒は必要である。そうした点で、筆者が最も警戒しているのは、中国のリスクだ。
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