楽天、トラベル社長交代は吸収合併の布石 ライバルはグローバル旅行サイト?

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いや、そういう話ではまったくない。入社したときの役割は、楽天トラベルの中の編成・マーケティング担当の役員。技術者・プログラムエンジニアのカウンターパートとして、どんなデザインのサイトを作って行くか。それから、ソーシャル(メディア)や検索エンジンに対してどうマーケティングしていくのか、どんなCRM(顧客関係管理)をすればよいのか。エクスペディアやトリップアドバイザー時代から経験してきた。

――では、楽天トラベルに移ったきっかけは?

私は(サイトの開発など)プロダクトをどんどんよくしていくのが好きです。トリップアドバイザーの強みも開発にあり、そこにユーザーの口コミ評価があった。同社で日本語サイトおよびアジアの開発をやってきたが、それが一段落したところで、もう一度原点に返って開発にフォーカスしたことをやるチャンスがないかと、何となく思っていたところに、(転職の)お話をいただいた。

楽天トラベルなら宿泊施設との関係がよいし、社内に開発部隊も抱えている。国内の他の企業と比べると圧倒的に速いペースで開発を進めている印象があった。ただ、グローバルの、本当のリーディングカンパニーと比べたときには、開発ペースなどに、まだまだ発展できる部分は多いのかなと思い、個人的にもすごく面白いなと感じた。顧客との関係やデータ整備を一から始めなくても、どんどん開発を進められる強みもあるし。

グローバル企業に比べれば改善の余地

――「まだ発展できる部分」とは、具体的には?

一つには、グローバルに技術の進んでいる企業のほうが、ウェブ開発において失敗している数がもっと多い。より多くのトライアルをしてより多くの失敗をして、その中からより多くの成功しているものをちゃんと実際のプロダクトにしていく。だからサイトのデザインが変わるペースなどが、より速い。楽天トラベルもかなり早いが、世界一を目指せば、まだまだ改善の余地はある。

もう一つは、(グローバルに技術の進んでいる企業のほうが)コンテンツの中身ではなくてサイトの作りとして、テンプレート化(共通化・標準化)とカスタマイズの部分のバランスをうまくコントロールしている。たとえば新しいサービスを出すとき、70点くらいの完成度だけれど、2カ月でアップしてしまう。特に新しい言語のページを立ち上げる際などのスピード感はめちゃくちゃ速い。

予約サイトのブッキング・ドット・コム(オランダに本社を置くグローバル企業で、世界50カ国に支社を展開)は、すでに40言語でサービスしているが、各国向けのカスタマイズは最小限で、ユーザーの反応を見ながら現地対応するアプローチをしている。

私どももグローバル展開を進めているが、実際に使っていただいた人たちからの声とか、サイトの動線とか、どのページを見たかとか、ずーっと追跡して、「このページでみんな離れていっている」「このページは翻訳が悪いのだろう」といった分析を進めている。文化的にサイトの使い方が異なる点などのデータを基に、現地のプロのサイトと表現を比べて改善するようなアプローチをどんどん強めていきたい。

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