タクシー「初乗り値下げ」、何キロまでお得か 10年で利用者3割減、「ちょい乗り」喚起の行方

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こうした事情は、新運賃の決定の裏で繰り広げられた激しい駆け引きにも表れた。各社が関東運輸局に申請した運賃は14パターンに上り、「それぞれの陣営に引き入れようと申請前の勧誘が活発だった。下町のタクシー業者は、初乗り約1.3キロ490円で出したところが多かったようだ」と岩田氏は言う。

最終的に運賃基準は、最も多かった申請金額に近い形で決定した。自社の申請とは乖離があっても従う必要があり、収益へのダメージが大きい業者も出てくるだろう。

ライドシェアに戦々恐々

タクシー業界の自己改革はこれで終わりそうもない。今後、米ウーバーなどライドシェア(相乗り)サービスが本格上陸する可能性もあり、対策を迫られているからだ。

今のところ日本では、京都府などの一部過疎地域での、ウーバーのシステムを利用したNPOによる送迎サービスなどに限られている。

ただ、海外ではライドシェアが着実に浸透しており、タクシー業界は次なる手を模索中だ。目的地までの交通事情にかかわらず乗車前に運賃を確定する「事前確定運賃」の導入などが検討されている。

業界内の利害対立を乗り越え、国内需要の低迷と外圧の脅威に立ち向かうことができるか。初乗り値下げの成否は、タクシー業界の今後を占う重要な試金石となる。

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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