タクシー「初乗り値下げ」、何キロまでお得か 10年で利用者3割減、「ちょい乗り」喚起の行方
利用者数が激しく落ち込んだのは、2007年に初乗り運賃を660円から710円に値上げしたときだ。さらに2014年4月に消費税率が8%に引き上げられたことに伴い、初乗り運賃は730円まで上昇。乗車の敷居が上がり、利用者数は低迷したままだ。
そこで今回狙ったのが、初乗り値下げによる「ちょい乗り」需要の喚起だ。少子高齢化の加速により、高齢者の短距離移動のニーズは高まっている。若者のタクシー離れも進んでおり、初乗り距離を短く設定することで乗りやすさをアピールしたい考えだ。
実は過去にも初乗り運賃の値下げがあった。1997年、特別区・武三地区では規制緩和によって初乗り2キロ660円とは別に、1キロ340円の運賃が認められた。ただ当時は危機感が薄く、この運賃を採用した業者は台数ベースで4%程度にとどまった。利用者は「340円タクシー」をつかまえることが難しく、認知も進まないまま5年で姿を消してしまった。
タクシー業者の間では賛否両論
今回ようやく本格的な運賃改定が実現したが、タクシー業者の経営への影響は小さくない。杉並区を地盤とするコンドルタクシーグループの岩田寿社長は「メーター1つ改修するのにも約2万円かかる」と投資負担の重さを嘆く。
労働組合は今回の新運賃に反対を表明した。自交総連東京地連の川崎一則書記長は、ビジネスなどの長距離利用が少なく初乗り比率が高い下町のタクシー業者に不利な改定だと指摘する。「都心で客待ちをするように会社から指示されたという乗務員の声も上がってきている。タクシーが集中して供給過多になる懸念がある」(川崎氏)。
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