「やるしかない」、財政目標はまだ達成可能だ 目標未達なら「アベノミクスは失敗」の結論に

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では、2020年度までの財政運営で、この年平均0.9兆円の歳出増にとどめるような運営を行えばどうか。2017年度から歳出は2.7兆円の増加にとどまる。今回の「中長期試算」で見込んでいる10.4兆円の増加を、過去の経緯と同程度の2.7兆円にとどめられれば、7.7兆円も収支改善に貢献できる。2020年度の基礎的財政収支赤字を8.3兆円と見込んでいるから、残り0.6兆円の収支改善努力を追加すれば、2020年度の財政健全化目標は達成できるのだ。

もちろん、国と地方合わせて年平均0.9兆円の歳出増に抑えるというのは、何らかの改革努力なくしてはできない。歳出増の圧力もあり、新規施策もある中で、工夫して財政運営を国と地方が協力して行ってきた結果である。

努力すれば、目標はまだ達成可能だ。「やるしかない」。2020年度の財政健全化目標の取り下げを、早々に決める必要などまったくない。
 

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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