いくら大量採用しても定着しなければ、企業としても、採用や育成にかけた時間もコストもムダになってしまい、大きな痛手になります。採用の生産性と、企業への定着率を向上させるため、企業はES(従業員満足度)を高め、CS(顧客満足度)を高め、健全なビジネスサイクルを回していくことに取り組んでいます。
利益を維持しながら、社員が長く生き生きと働ける環境を整えて、顧客満足度も高める。難しいことですが、すでに実現している会社もあります。ある不動産流通の会社では、残業時間を制限する働き方改革を数年前に断行。きちんと休養が取れることで、中身の濃い働き方になったのでしょう。業績も定着率も高まっています。
また、その事実が就活生に伝わり、本気の応募者が増え、採用の歩留まりもアップしました。量の確保から質の追求へと、採用活動のステージがアップしたのです。
この会社に限らず、従業員満足度を高めることが定着率向上につながり競争優位になる、と考えている企業は多く、本気の改革が始まっています。就活生の皆さんの中には、特定の業種などに対して大量採用・大量離職のイメージをもっている方がいるかもしれませんが、採用に積極的な企業の多くは、事業規模を拡大する気概と体力のある会社です。固定観念をもたずに、業界研究や企業研究で今の姿を知り、その未来の姿にも思いを馳せてほしいと思います。
アルバイトが採用ルートになる業種も
採用の生産性と早期戦力化による事業活動の生産性を高めるために、変化しつつあるのが、「チャネルの多様化」と「インターンシップの位置づけ」です。
採用チャネルの多様化では、特に流通やサービスの分野で、アルバイトやパートからの採用ルートを整備する企業が増えています。アルバイトやパートは会社の事業に一定の理解があることが評価されているのです。ある外食企業では、パート・アルバイトからの応募が新卒採用の6割に達しています。
また、インターンシップでは、店舗での仕事への理解を求めるだけでなく、その先にどんな仕事があり、どんなキャリアが積めるのかを知ってもらうための工夫もしています。
ある企業では、仮に店長になったとして、その先はどうなるのかキャリアパスを示したり、自己投影できる情報を整えたりして、インターンシップのプログラムに反映させています。
最初に店舗での1日、1カ月の仕事の流れなど、入社後すぐに始まる日常業務を知ってもらう一方で、5年後10年後のキャリア形成など長期の自己投影ができるようなプログラムも使って、短期と長期、2つの像をしっかりとイメージしてもらっています。
2018年新卒向けのインターンシップで目立った傾向としては、1日など短期間のプログラムが増えたことです。企業の本音としては、5日間ぐらいかけて店舗での就業体験を稼働させたいのですが、メーカーなどと異なり流通やサービスの場合、現場のオペレーションには入れにくいという事情があります。
そこで現場のリアルを伝える工夫として、営業職なら実例をベースにしたケースワークをしたり、接客なら先輩とロールプレイングをしたり、疑似体験プログラムをつくっています。
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