クーリッジ政権時代の米国は好景気に沸いたが、1929年に同氏が大統領を辞任すると、直後に株価が大暴落し、大恐慌に突入した。1930年代になっても1920年代を懐かしむムードはなく、偽りと不正が横行した時代だったと見なされた。
トランプ政権が同じ過程をたどると言いたいわけではない。クーリッジ政権はあくまで歴史上の一例だ。それに、トランプ氏とは違い、クーリッジ氏もメロン氏も、分別と節度をわきまえていた。
だが、トランプ氏の当選が今後も株高の追い風になるというのは、やはり幻想といっていい。
確かに同氏の大統領当選から2日後の2016年11月10日、ダウ平均は過去最高値を記録し、その後も最高値更新を続けた。しかし大統領選以前から、米国株は高値圏で推移していた。トランプ氏の当選でハネ上がったわけではない。名目ベースで見ると、ダウ平均は2000年1月から約7割上昇しているのだ。
すでに米国はインフレ政策を実施しており、FRB(米国連邦準備制度理事会)はインフレ目標を年率2%に設定している。つまり、あらゆる物価が10年間で見れば約2割上昇する計算になる。
インフレ調整を加えた実質的なダウ平均の2000年以来の伸び率も19%。17年間で19%という伸び率はさして大きくはない。さらにS&Pケース・シラー住宅価格指数は、インフレ調整を加えた実勢では2006年比で16%低下している。しかし、こうしたインフレ面を気に掛ける人はほとんどいないのが実情だ。
錯覚に頼りすぎる危うさ
グーグルの書籍のキーワード検索によると、「インフレターゲッティング」という用語は、90年代初めから飛躍的に増えている。ゼロインフレではなく、適度なインフレによって実質的な物価安定を図るという政策は、1990~91年の景気後退期に定着し始めた。
株価は材料を織り込んで日々、変動し、一本調子で上がり続けることはあまりない。いったん最高値をつけると、しばらくはそれを更新しないのが通例なのだ。
今、株式市場ではトランプ氏当選を追い風に最高値更新が相次いでいる。それが錯覚を生み出し、楽観論が広がっている。これまで極端な売買ポジションを取り続けてきた市場参加者は、仮に損失を被っても、いい教訓を得られるはずだ。それは投機的な市場では、幻想が崩れれば相場が様変わりするということだ。
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