──その問題意識が、この本の執筆動機ですか。
以前から、キャリアをどう考えたらいいのか、若い人から質問されることが結構あった。私が職を転々としているのを知って、自身の閉塞感からアドバイスを求めてくる。内資、外資を経験し、会社を俯瞰できる立場の人間はどう考えるのか。若い人に対する「道しるべ」のようなことを言えたらいいと思った。
同じ戦略をずっと続けていても通用していた高度成長期あるいは人口ボーナス期ではない。日本全体が思考を転換しないと競争力がそがれていくとの危機感もあった。特にエリート層が奮起して変革しなければ、日本自体が存続できないだろう。変革を手掛ける人が一人でも増えてほしいという気持ちがある。
──個々人としては、市場価値をどうつけるのですか。
私自身は、市場価値を上げるためにという考え方はなかった。今、人工知能(AI)で職業が減ってしまう話もあるが、もともと多様なバックグラウンドがビジネス界では生きてくる。今の会社を飛び出したときにどうなるかが本当の価値であり、それを高めなければリーダーにはなれない。若い人にそういう意識が結構芽生えているのではないか。
ボトムアップで仲良くするなど不可能に近い
──どういう人材を評価するのですか。
人材の「因数分解」ができているわけではないが、ある程度地頭のよいことが前提だ。センスというと語弊があるかもしれないが、物事の大事なことと大事でないことを、いろいろな違った文脈の中で正しく優先順位づけできること。あるいは、いろいろなカルチュラルなやり取りの中で流れや空気を読む感覚も気になる。ただ、それらも年月を経るうちに変わる。すばらしい人材だなと思っていたのが、覇気がなくなったりする。将来への洞察も必要だ。
──意欲と情熱が欲しいと。
スポーツも、勝ちたいと思わなければ懸命には戦わない。今の日本のままだと、東京オリンピックの後、どうなっていくのか。特に経済的に。単純な言葉でいえばもっと生産性を上げるということだが、イノベーションをもっと生み出していかないと生き延びられない。そのためにはリーダーシップを持つ人材が豊富にいる。
──「自己完結」できなければリーダーになれない、ともあります。
リーダーに求められる資質や能力は本当に変わってきた。
別の人にクリティカルな判断を任せるのでは、会社を背負っていけない。中でもコンプライアンスの問題が起きないチェックは、自己完結していないと見逃す。
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