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そのような日本たたきの理由は、近くの大きな書店に行ってすぐにわかった。”The Emerging Power of Japanese Money(台頭する日本マネーのパワー)”や“YEN!”、“The Japanese Negotiator(日本人交渉者)”といった、バブル経済絶頂で世界を席巻する日本の脅威を訴える本が所狭しと店頭に並んでいた。日本人や日本社会は欧米と基本的な価値観や民主主義を共有できない異質なものと説く「日本異質論」(リビジョニズム)がまさに隆盛を極めていた。
そんななか、翌1989年にはさらに対日感情を悪化させる出来事が相次いだ。ソニーが米映画会社コロンビア・ピクチャーズを買収(ニューズウィーク誌が着物を着た自由の女神像の画を表紙に載せ、大きな話題になった)。そして、不動産王・トランプ氏の地元ニューヨークでも三菱地所がロックフェラーセンターを買収した。ハリウッドとニューヨーク・マンハッタンの象徴とも見なされるものを次々と日本企業が買い占め、日米文化摩擦が生じ、政治問題化していった。
1980年代は、全米自動車労働組合(UAW)日本車をハンマーでたたき壊すパフォーマンスもよく放映されていた。
日本のナショナリストも負けてはいなかった。政治家である石原慎太郎氏とソニー会長だった盛田昭夫氏が『「NO(ノー)」と言える日本』を出版し、日本側の主張を展開したのもこの頃だ。残念ながら、この本の出版によって誤解を解くどころか、日米間の不信は強まり、両国の関係はさらに悪化した。
トランプ大統領は当時から日本たたきの論陣を張ることでも有名だった。大統領選出馬を模索していたとされる1987年9月にはニューヨークタイムズ紙などに意見広告を出し、「日本、サウジアラビアなどに米国が提供している防衛のための費用を払わせよう」と、米国民に呼び掛けていた。
米メディアは、トランプ大統領が、日米貿易摩擦が吹き荒れたレーガン政権時代からのこうした対日観を今も引きずっていると指摘している。ニューヨークタイムズ紙は「1980年代の貿易観で日本を批判している」と報じた。
実は歴史的に低水準の米失業率
トランプ大統領は米史上、最も雇用を創出する大統領になると宣言している。しかし、統計を見ると、2016年の米国の失業率は4.9%で、歴史的な低水準にある。2008年のリーマンショック後、2010年の9.6%をピークにして減少の一途だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)がつねに重要視してきた長期失業者の数も大幅に改善している。長期失業者とは、職を得ようにも職に就けない期間が27週以上の失業者だ。この失業数も2010年4月に戦後最悪の680万人に達したものの、昨年12月には183万人に減少し、リーマンショック前の2008年7月以来の低水準となっている。つまり、米経済はすでに完全雇用に近い状態にあるのだ。
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