日本のサービス業は「1人あたり」でG7最低だ ITに合わせて「働き方」を変える努力を

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これは、皆が結婚し、男性は仕事、女性は専業主婦という時代だからこそ許容されていた仕組みでしょう。これなら、奥さんがいつでも銀行に行けるので、問題はありませんでした。

しかし、今はそんな時代ではありません。男性も女性も外で働くことが多くなりましたので、結局、昼休みに銀行窓口の長蛇の列に並ばざるをえないのです。このような光景を見るにつけ、多くの人の生産性が犠牲になっていると感じます。

くだらない例だと思われるでしょうか。しかし、こういった例はたくさんあります。「塵(ちり)も積もれば山となる」のことわざのとおり、日本の生産性を下げる要因は、社会全体に蔓延しているのです。

さらに、Uberが認可されない、駅の券売機でクレジットカードを使えないことが多い、オンラインで予約できないレストランがまだまだあるなど、さまざまな面で日本は取り残されている感じがします。

生産性向上には「大きな変化」が不可欠

ITとは関係ないですが、同じ現象は農業にも起きています。戦後、農業の機械化が進みました。機械化すると、普通の国では農家の数が減り、法人化され、農地は統合され、1人あたりの平均耕地面積は上がります。

しかし、ご存じのとおり日本ではそうなりませんでした。日本の平均耕地面積は、米国などを除いた他の先進国のおよそ30分の1です。つまり、日本の農業における機械化は、ひたすら農作業を楽にしただけだったのです。生産性を上げるためには、機械化に伴って農地を集約するなどの「抜本的改革」が必要なのです。

このような指摘をすると、また「地形」うんぬんの正当化が聞こえてきそうです。スペースの関係でそれを議論することはできませんが、地形だけでこの問題がすべて説明できるとは、到底思えません。

人口に占める農家の比率が相対的に高いにもかかわらず、輸出は少なく、食料自給率も低いという日本の農業の現状を正当化するのは、極めて難しいのではないでしょうか。

どんな業種でも、ITを導入して生産性を上げるためには、大きな変化は避けられません。場合によっては、ITの犠牲になってしまう人も出てくるでしょう。今の日本は、どちらかといえば変化に対する反対が多い国ですので、結局はIT導入によって生産性を上げることができていないのだと思います。皮肉なことに、人が足りないのに、ITを活用して同じ仕事にかかわる人を減らすことができないので、移民を増やそうという不思議な議論まで展開されています。

生産性を向上させるためには、組織や仕事のやり方を抜本的に変える必要があります。当然「痛み」を伴うケースもあるでしょうが、もはや躊躇していられる状況ではありません。逆に、それさえできれば、日本人の潜在能力を考えれば劇的な生産性向上が期待できます。イタリアでもスペインでもできることを、日本でできないはずはありません。要は「やるか、やらないか」、それだけなのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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