箱根山中で4校をかわして、往路を7位でフィニッシュ。区間トップには22秒届かなったが、区間3位と快走した。箱根湯本から芦之湯(15.8キロメートル地点)までの「上り区間」のタイムは区間賞を獲得した駒澤大・大塚祥平よりも18秒速く、「隠れ・山の神」ともいうべき存在なのだ。今回は故障の影響で準備不足だったが、万全な状態で挑むことができれば、来年は「山の神」として降臨する可能性を秘めている。
中央学院大も箱根メンバーで卒業するのは2名(7区海老澤太、10区村上優輝)だけで、1~6区のメンバーは全員残る。6区には前回区間3位、今回も故障明けながら区間5位と好走した樋口陸(2年)がおり、箱根山中でトップに立つことができるだけの戦力があるだろう。
青山学院大に負けない指導力とビジョン
来年の箱根駅伝を見据えた「チーム構成」を考えると、東海大と中央学院大は青山学院大に負けないだけの破壊力がある。それだけではない。東海大・両角速駅伝監督と中央学院大・川崎勇二監督の指導もスゴイのだ。
東海大・両角監督は、佐久長聖高の監督時代に後に“日本長距離界のエース”となる佐藤悠基(現・日清食品グループ)、大迫傑(NikeORPJT)らを育てているが、母校の駅伝監督に転身して、その指導はさらに専門的になっている。米国で学んだストレングスコーチと契約して、フィジカルを強化。主力選手は常圧低酸素テントの中で眠り、さまざまな標高を設定できる低圧低酸素室や、荷重のかからないかたちで運動できるトレッドミルなど、最先端のトレーニング機器も活用しているのだ。定期的に最大酸素摂取量を測定して、生理学的数値から身体能力の向上を選手が実感できるような工夫もしている。
両角監督の指導で特徴的なのは、「世界」に目を向けていることで、それは佐久長聖高時代から変わらない。「3位以内」を目指した今回の箱根駅伝は総合10位に終わったが、「1年生は箱根を甘く見ていたところもありますし、足りないところを伝えて、やらなきゃいけない。ただ、箱根、箱根といっても、彼らが持っているスピードを殺すようなことはしたくありません。距離を踏むのではなく、ほかの部分で上げていくこともできると思うので、しばらくは箱根のことは考えず、トラックに専念させたいです」と話していた。そして、「グローバルな視点で物事を考えさせたい」と2~3月には關ら1年生数人を米国・オレゴン大学へ短期留学させる予定だ。
現在、世界の長距離・マラソンはケニア、エチオピアを中心としたアフリカ勢が席巻している。そのなかで近年、力をつけているのが米国勢で、両角監督はそこに日本人が速くなるヒントがあると前々から感じており、選手たちを武者修行に行かせるのだ。それは箱根のためではなく、世界大会で活躍するためのアプローチといえるだろう。
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