能力ではなく「興味開発」こそ子育ての肝だ 「好きなことで自立する」を確実にするために

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私たち親自身の経験として、天からの啓示、つまり、偶然、好きなことと巡り合う、ということはよくある話だが、やはりもう少し計画的に準備したい。ふと思いつくのが、「いろいろな経験をさせる」とか「いろいろな人に出会わせる」ということだろう。実際に「具体的な準備は?」と聞いて、そう答える人と筆者は多く出会ってきた。

しかし、どうだろう。「好きなことを見つける⇨いろいろな経験&人との出会い」という図式に納得してしまってよいだろうか? 親にとっても子にとっても、さらには社会にとっても大切なこの願いに対し、短絡的ともいえるアイデアで「一件落着」とするのはやはり問題だろう。もっと明確で、具体的なソリューションが必要だ。それは、能力開発とはまた異なる教育的アプローチである。

一言で言えば、それは「興味開発」ということになるだろう。「興味を開発する」と言葉にすると最初は違和感を覚えるかもしれない。おそらくそういう人は「興味は自然と湧き出るもの」と考えているからだろう。しかしそれでは「好きなことは偶然巡り合うもの」と考えるのと同じであることに気づかなければならない。その概念は何の前進も生み出さない。

「能力」開発に追われる教育業界

能力は自然と伸びるものではない。むしろ具体的な活動を通して開発できるものであることを私たちは知っている。だとすれば、興味も同じように開発できるはずだ。子どもが物事への興味や関心を高めながら、人生の大半の時間を費やすことになる対象事を見極めるプロセスを支援する。そんな興味開発というアプローチを、これからの教育は課題として抱え、研究を重ねながら具体的な方法論に落とし込んでいく必要がある。

ただ残念ながら、その必要性に気づいて実践している教育機関は少ない。なぜならみんな「能力開発に追われている」からだ。もちろん、能力開発が興味開発に比べて重要度が低いわけではなく、相変わらずその必要性は極めて高いわけなので、能力開発に夢中になるのは自然なことだろう。ただ、みんながあまりにもそこに注意を払いすぎているために、もうひとつの興味開発という新たなニーズの存在が影に隠れてしまっているのだ。あるいは気づいていたとしても、目の前の能力開発という課題で手いっぱいで実践する余裕がなかったりする。

でもよくよく考えてみれば、能力開発は興味開発とセットにすることでうまくいく。子どもにしてみたら、「自分が将来やりたいことに必要な能力だ」と理解できれば、やる気も湧いてくる。従来のように「今頑張らないと将来不幸になる」と子どもを脅して頑張らせようとする仕事から、先生も親も解放されるというものだ。

ではいよいよ本題。興味開発とは具体的に何をすればよいのだろうか? どんな準備や活動が、子どもの興味を広げ、好きなことを見つけてチャレンジする人生へと導いてくれるのだろう? 正直なところ、明確な答えは筆者にもわからない。ただ筆者が自信を持って言えることは、子どもの興味を広げて好きなことに出合わせるためには「わあ!すごい!」という言葉を子どもから引き出せ、ということだ。

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