あの木村新司氏が「割り勘事業」を始める理由 「paymo」はマネー最適化の起爆剤になるか

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また、こうしたカード決済端末は、iPhoneやiPadのようなスマートデバイスに接続するだけで決済が可能になり、導入のコストも下がったので、「自分の店でもやろう」と考える。小さい店舗に対しても、広告費を使わずに、バイラルするわけです。トランザクション(取引)が増えれば増えるほど、バイラルすることになる。

小さな店舗も含めて日本中にカード端末が普及すれば、どこに行ってもクレカが使えるようになる。これが大事で、小さい店舗も含めて全体で使えるようになると、ユーザーの意識も変わり「決済はクレカでいいか」という人が増えていきます。さらに、スマホでカードを認証していれば、サインしなくても決済できるようになるので、より普及することになる。

──2つ目のポイントは?

スマホを使ってECでおカネを払った人の数が、この2年くらいで急速に増えたことも大きい。最近になって、メルカリのようなCtoCのショッピングにおける決済額も、トータルで2000億円近くになった。「個人間の支払いって、こんなにできるものなんだ」という認識が世間に広まったことが重要です。

「最適化」こそ経済成長を導く

しかし、まだ友達同士だとなぜかおカネが送れない、という歪みが存在します。この段階まで来れば、次は「店舗では使えるのに、個人間ではどうして使えないの?」といった不満が噴出してくる。個人間決済のニーズは、これから急激に広がるので、とにかく便利にしたい。現状ではあまりにも不便すぎる。

──取引の「最適化」については、既存の規制などもあってクリアするべき課題が多いですね。

木村 新司(きむら しんじ)/1978年生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。ドリームインキュベータ、シリウステクノロジーズ取締役を経て、2007年にアトランティスを創業。2011年に同社をグリーに売却後、投資家としてGunosy創業に関与、共同最高経営責任者(CEO)を務める。同社上場(2015年4月)。Gunosy 共同最高経営責任者(CEO)退任後、個人投資家として、数十社のスタートアップ・ベンチャーに投資。2016年6月にAnyPayを設立。創業者兼代表取締役に就任(撮影:尾形文繁)

中古品って昔はタダ同然みたいな価格で業者に引き取られていましたが、今はメルカリなどのフリマアプリで、以前では考えられなかったような値段で売られたりしている。不動産も同じで、買って普通に賃貸に出すだけだと、もう利回りがとれないですが、Airbnbのように、短期間だけスペースを売る、という市場ができれば、これまでは発生しなかった利益が生じる。

こうした最適化によって得た余剰資金を、また次への投資へ振り向けていけるようになれば、新しく利益が出て、それを元手にさらに次のものが買えるようになる。機会損失が減ることで、結果として日本のGDPが伸びるということは十分にありえると思います。

おカネも同じで、現金だと煩わしいから個人間での活発なやり取りが起きない。決済の場面でも、端末がなければ現金払いしかできなくて、そうなると一部のお客は「現金ならここでは買わない」という話になってしまうことが起きている。つまり、まだまだ効率が悪い。効率がよくなれば、大きく伸びる余地あります。

日銀が次々に金融緩和をして、ついには金利をマイナスにした。しかし、もう単純な生産には投資されなくなっている。日本はモノに溢れているし、今のままでは経済成長を望むことは難しい。そこで重要なのは、おカネを情報化し、いつでもどこでも、すぐに使える環境を作って効率性を上げられるか。マネーは、もっともっと「軽く」なるべきなんです。

過剰に生産してしまったマネーや動産、不動産の効率化を経ると、これまでとは違った形で、世界が安定的に成長するようになるのではないでしょうか。そういったことに、AnyPayやpaymoなどのサービスを通して、貢献できればいいと考えています。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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