海外拠点閉鎖のグリー、焦点は国内リストラ 急速に進めた戦線拡大の処理を余儀なくされている

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グリーは業績が急拡大していた11年から海外展開を本格化した。だが、ヒット作が生まれず、赤字が常態化。12年末には買収した米国子会社の人員削減を実施した。ここにきて国内事業の収益も厳しくなってきていることから、採算改善の見込めない海外拠点をまとめて閉鎖することを決定した。

収益基盤の国内事業を侵食するのは、スマートフォンの普及だ。

スマホ普及で主導権失う

グリーと、ライバルであるディー・エヌ・エー(DeNA)は、従来型携帯電話向けソーシャルゲームで急成長を遂げた。自社のゲームがヒットしたうえ、他社のゲームの配信・課金を代行するプラットフォーム運営で巨額の利益を稼ぎ出した。だが、スマホにおいてこうしたプラットフォームの主導権はアップルとグーグルに移っている。

DeNAは13年1~3月期にサービスの開始以降初めてゲーム内の仮想通貨消費額が減少、同4~6月期は3四半期連続で営業減益となる見込みだ。グリーに先駆ける形で、06年に海外へ進出したが、今もなお赤字が続いている。

ただし、DeNAに比べても、グリーの業績悪化は甚だしい。ヒットゲームの有無もあるが、急成長時に「エンジニアを強引なまでに囲い込んだ」(グリー陣営の開発会社幹部)ことが響いている。

13年3月末のグリーの連結従業員は前年の2倍強となる2555人だった。対して、DeNAは16%増の2108人にとどまる。グリー関係者も「余剰」と認めているように、膨れ上がった固定費負担が収益を圧迫している。また、グリーはDeNAと比べてゲーム事業への依存度が高いため、「あふれた人員を吸収できない」(別のグリー関係者)という悩みがある。

今後の焦点は、グリーが国内でも人員削減を実施するかどうか。そのほとんどが国内事業に携わっている単体従業員は1700人程度で、DeNAの935人と比べ倍近い。本格的な収益改善を行うなら、国内こそリストラが必要なはずである。
 会社も危機感を持ち、すでに採用にはブレーキをかけた。一時期、月に50~60人規模で行っていた中途採用は今年5月からほぼストップ。14年4月入社予定の新卒採用は今年と比べ、3割減らす見通しだ。

会社は国内リストラの可能性について「全社的に選択と集中を進めているところだが、現時点で決まっている事実はない」と説明する。

しかし、すでに非正社員の雇い止めを進めているほか、給与体系の変更を行い、人件費の削減に着手するようだ。業界内では「正社員の数自体を減らすのも間近」とのうわさも飛び交っている。

イケイケの攻勢から一転、守りを固める局面が続くグリー。再び成長軌道に戻すため、田中良和社長は難しい選択を迫られている。

(撮影:田所 千代美)

(週刊東洋経済2013年7月20日号)

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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