トランプ大統領誕生後の米国はバブルになる 第一生命経済研究所の嶌峰・西濵氏が予測
――秋の共産党大会は、人事面でも注目されます。
西濱:習近平政権ができたときには、「5年後彼はやっているのか」なんて声もありましたが、実際には安定しています。安泰に近いでしょう。ここまでナンバー2の李克強首相と差がついたのは、なんといっても軍部を掌握したからです。前の政権や江沢民の影響力を少しずつ削っていき、スマートに実権をつかみ取りましたね。
ただ、それは中国に問題がない、ということではないです。問題はたくさんあります。ガンはかなり大きい。でも、図体がものすごく大きいので隠れてしまっているだけです。世界第2位の経済大国、という看板がありますが、経済にしても内政にしても、すべてを私たちの一般的な目で見てはいけない、それが中国であることは今も変わりはありません。
――足元では資金の海外への流出が盛んにいわれています。またトランプ氏は1つの中国を否定するようなそぶりも見せています。
西濱:当局は無理やりでも流出を抑え込むでしょう。国内に関しては取引が中国人だけで閉鎖的なので、問題なくできます。ではオンショア、オフショアの乖離が大きくなったときにはどうするのかと言ったら、「外国人を使えばいい」と中国人民銀行で言い始めています。でたらめに聞こえますけどね。体力勝負でやってくると思います。2017年には対応できるでしょう。
基本的に習近平政権は「太平洋をアメリカと中国の2大国で治めましょう」と言ってきました。オバマ政権はそうはさせないと、アジアに碁を置いた。でもトランプ氏は「好きにすれば」という姿勢をとる可能性がある。となると、中華思想で太平洋・アジアにどんどん碁を置けるわけです。だから、習近平政権は「与(くみ)しやすし」と思っているでしょう。
中国にとっての「嫌なシナリオ」とは?
――はっきりと敵対という姿を見せてくれるほうが、中国としては対応しやすくなるということですね。
西濱:アメリカと中国とどっちがいいのか、「この指止まれ」と南アジア諸国に対して堂々と言えるわけです。
嶌峰:どちらかというとアメリカにとっては、太平洋戦略よりも、中国から安いものが入ってきているほうが問題でしょう。
米中で世界を二分しよう、という問いかけに、アメリカの答えがあるとしたら、「ウチは米ロで考えています」ということではないですか。これが中国にとっては頭の痛い回答でしょう。しかもロシアにアメリカを選ぶ余地があったら、それがいちばんイヤなシナリオ。そこに日本もかかわるわけですからね。日米ロ、という三角となるのが、中国には脅威、というより「イヤな感じ」でしょうね。
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