トランプ大統領誕生後の米国はバブルになる 第一生命経済研究所の嶌峰・西濵氏が予測
嶌峰:ジャネット・イエレンFRB議長の利上げ姿勢は未知数でした。どうなったら利上げをするのか、やったことがないわけですから。そこで、過去の利上げタイミングを参考にしました。それは元議長のグリーンスパン氏のやり方です。マーケットへのインパクトを最小限にして芽を摘む方法ですが、そこを参考にするのではないか、と思ったのです。
しかし、彼女の金融政策のスタンスがだいぶイメージと違っていました。景気の失速はないうえ、次に景気が循環的に拡大することが見えていましたから、早めに手を打たないとバブルやインフレのリスクを抑えるのに、猛烈な勢いで利上げをしなければいけなくなる。そのほうがマーケットへのダメージが大きくなる。それは避けたいと考えて、早めに手を打ちましょうという感じで行くと思っていました。もしグリーンスパン氏なら、そうしたはずです。
しかし、イエレン議長は、不稼働資産、潜在成長率を上げるために、労働参加率の上昇を待ちたいと言い出して、利上げを先送りしました。しかも年後半までです。私はそんな危険なことをするとは考えませんでした。
――イエレン議長は、前任者とは違うことをやりたかった?
嶌峰:中央銀行は基本的に伝統的な手法を継承するのがパターンです。もし私がFRB議長だったら、グリーンスパン氏的な手法をとっていました。大統領選の年には利上げが行われない、といわれますが、僕はそうは考えません。大統領選挙が4年に1度。景気の循環も4年に1度。これはたまたまですよ。
私が予想を外すときは、いつも政策の読み違えです。景気対策であれ、金融政策であれ、とにかく政策の読み違え。基本的に景気の予想はそんなに大きく外れるものではありません。上を向いているか下を向いているか、とだけなら予想は当たるでしょう。そこに何を加味させるか。それが政策なんです。私はそこを読み違えた。
サプライズだったOPEC合意
――2016年の西濱さんの予想はどうだったのでしょうか。
西濱:なんといってもOPECの合意です。正直、できるはずないと思っていました。そこが大外しの理由でした。ただ、OPECの合意がそれほどのインパクトを与えたとは思えません。今の原油のたかが4割以下の取扱量ですし、しかも減産はその5%の話です。中東産油国としては、首の皮一枚つながって、ここからよくなる、と考えているでしょうけど、これが混乱するもとになるでしょう。
――混乱とは具体的にはどんなところでしょうか。
西濱:IS(イスラム国)関係です。トランプ大統領になってロシアとどう手を組むかですよね。ここでの問題はシリアです。つまりアサド大統領を支持するのか、反アサドか。オバマ大統領の下ではNATO(北大西洋条約機構)もアラブも、反アサドだったわけです。それがロシアと共闘するということは、イコール、アサドと手を組むということになります。そうなるとNATOの立場がないですよね。
アメリカとロシアが接近するとしても、それでことが解決に向かうかといえば、そんな簡単なわけがありません。もっと複雑になるかもしれません。少なくとも、2017年中にこれだけ複雑に絡んだ方程式が解けるとは考えにくいですね。
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