トランプ大統領誕生後の米国はバブルになる 第一生命経済研究所の嶌峰・西濵氏が予測

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――ドル高による新興国の資金流出の懸念は? 以前よりは脆弱ではないとの指摘もありますが。

西濱:アメリカが利上げをすれば、必然的に海外資金は新興国から逃げますよね。問題は、アフリカなど、特に資源国は、米ドル等主軸通貨の金利が異常な低さだったため、2016年後半は主軸通貨で資金調達したんです。そのほうが条件はよかった。しかし、2017年には金利が上がり、為替は下がる。債務負担がむちゃくちゃ増えます。まだ顕在化はしていませんが、利上げによって米ドル高がどんどん進めば、通貨危機になるリスクは十分出てきます。

「4段階」で新興国の通貨危機を見極めよ

嶌峰:リスクの表面化にはいくつかのパターンがあります。第1段階ではアメリカ経済が過熱して、金利が上がってきます。新興国は時差をもってついていきますから、経済パフォーマンスが悪くなりますね。ここが最初に危機に気づくチャンスです。

第2段階になると、新興国も輸出主導でよくなって、世界的によくなるんです。この段階では金利差が開いても問題にはなりません。新興国におカネが流れていく形になりますし、むしろドル安になったりもします。

第3段階は、景気はよくなっていくというパフォーマンスの中で、一方で対外債務を払えるほどのパフォーマンスを上げられないところは、だんだん金利負担が大きくなって、その段階で危ない状態になっていく。ここはのちに深刻な事態になります。過熱感がある中で、落ちてくるところが出てくるのですね。これがまさに1997年のアジア通貨危機のパターンといえます。

――今はどの段階でしょうか。

嶌峰:まだ第1段階が始まるかどうかという感じです。

西濱:ただ、トランプ氏が出てきたことで問題が増えました。第1段階となったことで、当然、為替安になりますから、輸出でドライブが利くはずなんです。そんなときにトランプ氏が保護主義を前面に出して、「新興国から輸入はしませんよ」なんてことを本気でやり始めたら、第2段階に行く前に新興国は潰れてしまいかねません。これが今考えられる最悪のシナリオです。

――まず第1段階で気づくことですね。そこから一足飛びに潰れる可能性のある国というのは、どんな国でしょうか。

嶌峰:見分け方は経常赤字国で短期債務比率の大きいところです。

西濱:ただし、世界がどんな状況になるとしても、日本にとってはアメリカが好調であれば、それ以上のことはない。これはアジアへの影響がわかれば、より鮮明になりますね。

石丸 かずみ ノンフィクションライター

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いしまる かずみ

いしまるかずみ/ノンフィクションライター 千葉県出身。ビジネス、マネー、医療/介護を中心に執筆。茨城県で被災。著書に「石巻赤十字病院、気仙沼市立病院、東北大学病院が救った命」「石巻・にゃんこ島の奇跡」「いちばんやさしいネコの気持ちがわかる本」「マーブル猫」など。
 

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