米国は建国以来ずっと「米国第一」主義だった トランプの気まぐれより重要な「米国の本質」

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この「米国第一B」は、いわゆる「エスタブリッシュメント」のイデオロギーである。トランプはこれを否定したことで、先の大統領選に勝利したのだった。(参照:「トランプ勝利もBrexitも「衆愚政治」ではない」

トランプの「米国第一」は分裂している

ところが、トランプがこれまで表明した政策の中には、実は、「米国第一A」と矛盾するはずの「米国第一B」も含まれていたのである。

たとえば、選挙期間中のトランプは、ドッド・フランク法(金融規制改革法)の撤廃や大幅修正など、金融規制の緩和を示唆している。また、所得税減税や法人税減税など、富裕層・金融階級に有利になるような税制改革も表明している。

トランプが指名した閣僚候補にはウォール街からの人材もいる。たとえば、財務長官候補のスティーブン・ムニューチンと国家経済会議委員長候補のゲーリー・コーンは金融最大手ゴールドマン・サックスの出身である。また、証券取引委員会(SEC)委員長に指名されたジェイ・クレイトンは、ウォール街と関係の深い弁護士である。

この金融中心の「米国第一B」は、安全保障政策にも反映される。

グローバルな経済活動の自由を確保するためには、世界の平和と安定が不可欠となる。このため米国は、「世界の警察官」として、国際紛争の解決やテロの撲滅のために積極的に関与・介入すべきである。ただし、各国家がグローバルな経済へと統合され、経済的な繁栄や民主化が実現すれば、やがては国際紛争やテロのない世界がもたらされるだろう。これが安全保障の「米国第一B」だ。

他方、国内経済優先の「米国第一A」は、「米国第一B」よりもはるかに内向きだ。世界の平和と安定のために積極的に関与しようとはせず、むしろ同盟国による米国への「ただ乗り」に強い不満をもつ。

中国との関係を例にとると、「米国第一A」は、自国の雇用を守るためには中国との摩擦も恐れない。しかし、東アジアの安定のために、中国と軍事的に対決する気はさらさらない。

他方、「米国第一B」は、東アジアの国際秩序の安定を重視し、この地域における米国の軍事プレゼンスを維持しようとする。もっとも、「米国第一B」であっても、中国との全面的な対立は避けるであろうが。

実は、トランプの「米国第一」は、安全保障においてもAとBを混在させているのである。

選挙期間中のトランプが、米軍駐留費を増額しなければ日本や韓国から撤退するとほのめかしたのは、「米国第一A」の典型である。

また、オバマ政権はクリミアに侵攻したロシアに対して、国際秩序を揺るがすものとして厳しい姿勢をとった。しかし、トランプはクリミアの件など気にせずに親露の立場を鮮明にし、ロシアとの関係が深いエクソンモービルのレックス・ティラーソンを国務長官に指名した。これも、「米国第一A」の表れといえる。

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