靖国神社合祀で新たに浮上する「2つの課題」 "賊軍"合祀運動も
8月15日の終戦記念日。靖国神社では、黒の礼装に身を包んだ国会議員の集団参拝が恒例化している。超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の面々である。
元自民党重鎮で、衆院議員の亀井静香氏は一度だけ加わり、やめた。理由はこうだ。
「国会議員はある意味で権力者。その権力者が徒党を組んでお参りするのは良くないと思ったから、翌年からは一人でお参りしました」
右派国会議員の中でも亀井氏の「権力」との間合いの取り方は独特だ。この老練政治家が今、情熱を注ぐのが靖国神社の「賊軍」合祀(ごうし)運動である。「賊軍」とは明治維新の際に官軍とされた新政府側と対峙して戦死した志士たちを指す。
「世界中で分断と対立が深まる時代だからこそ、日本人の和の心を大事にすべきです」
亀井氏はそう言って、身を乗り出した。
「国のためを思い、戦って死んだ人たちに敵も味方もない。今なお差別扱いするのはおかしいでしょう」
宮司は徳川慶喜家から
2014年8月の靖国参拝時、亀井氏は「白虎隊」「新選組」「西郷隆盛」といった具体名を挙げ、徳川康久宮司に合祀を打診した。亀井氏によると、徳川宮司はこれに同調したという。
「あの人は直系だからね」
13年に第11代宮司に就任した徳川宮司は、幕府の15代将軍・慶喜の曽孫に当たる。今回、徳川宮司には本誌の取材に応じてもらえなかった。ただ、徳川氏が「直系」として微妙な心情を吐露してきたのは事実だ。