米国が頭を悩ます、安倍政権の取り扱い方 歴史認識発言が、米中韓にもたらした波紋

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参院選後の安倍氏の動き

かつてホワイトハウスのアジア上級部長として、オバマ政権でキャンベル氏とともに仕事をしたジェフ・ベーダー氏は、新アメリカ安全保障センターが主催した最近のパネルディスカッションにおいて、オバマ政権が直面するジレンマについて語った。

ベーダー氏は安倍氏に対する失望を語るに当たり、一方で、安倍氏は日本が貿易や安全保障政策について「普通の国」になるために積極的な行動をとっていながら、他方で、「侵略を否定するような発言、靖国神社参拝、『慰安婦』性奴隷に関する橋下大阪市長のクレージーな発言があり、これらが今後の日本の安全保障に関する重要な議論をするうえで、考えうる最悪の環境を作り出している」と指摘した。もし安倍氏またはそのほかの日本人が歴史を否定し、そして「現在のずさんな対応が拡大するようならば、米国はより遠慮なく意見を述べることになる」とベーダー氏は述べた。

今のところ、米国は前面に出ようとせずに、事態の成り行きを静かに見守ろうとしている、とキャンベル氏は言う。CIAの委託を受けたシンクタンクの専門家たちがオバマ政権に提示した助言もこれと同じだった。

キャンベル氏は、米国の影響力には限りがあり、米国政府関係者が、安倍氏を公然と批判すれば逆効果となりかねず、結果として米国政府に対する怒りを生むのではないか、と懸念していると言う。

今後のポイントは、参議院選挙の結果を受けて、安倍氏がいったいどちらの側面を押し出してくるかだ。自民党が勝利すれば、安倍氏は勢いづいてナショナリスト的な主張に固執し、8月に靖国神社を参拝するのだろうか。もし安倍氏が靖国神社を参拝すれば、間違いなく米国政府はこれを批判的にとらえるだろう。

ボストン大学の日本専門家ウィリアム・グライムス氏は、米国が抱えるジレンマをこう表現している。

「安倍首相は、日本国内で力が強まれば強まるほど、自分の本来の主張、つまり安倍カラーを押し出す可能性が高まる。米国の立場からすると、安倍カラーは困りものだ。政治的な制約を受けずに安倍カラーを押し出せるようになれば、安倍氏は村山談話の修正をはじめとして、北東アジア地域の国際関係を困難にするような行動に出る傾向を強めかねない」。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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