たとえば、ジョン・ケリー国務長官は、先頃、ブルネイで開催されたASEAN地域フォーラムの会合において、韓国の尹炳世外相と日本の岸田文雄外相との会談を促した。その先にある目標は、安倍首相と朴槿惠韓国大統領との会談を実現することだ。
両国外相の会談の冒頭では、尹外相が4月に予定されていた東京訪問をキャンセルせざるをえなかったことに言及し、残念に思っていると述べたが、「理由は十分におわかりのはずだ」と指摘するのを忘れなかった。これは、4月初めの安倍首相の発言の中で、日本が前世紀に行った侵略と植民地化に関して、安倍氏が反省を欠いていることがまたしても明らかになったことと、同じ月に160名を超える自民党の国会議員が靖国神社を参拝したことを指して言ったものだ。
岸田外務大臣は村山談話に触れ、安倍政権は日本がかつて多大な危害を加え、損害を与えたとするこの見解を踏襲していると力説した。
中国に大きな外交的勝利を与えることに
ところがそのわずか数日後に、参議院選挙前の各党党首による討論の場において、安倍首相は自らの下にある外相の足をすくってしまった。この討論の中での安倍氏の発言は、日韓両国政府間の外交の行き詰まりを打開すべく、米国や日韓両国の外交担当者たちが何週間にもわたって懸命に取り組んできた努力を大きく損なった。朴槿惠大統領のアドバイザーたちは、「韓国の大統領は近いうちに安倍首相と会談するつもりはまったくない」と明言している。
米国政府関係者からも、安倍首相を警戒する声が強まっている。
ブルームバーグ・ニュースの主催により7月3日に開催されたパネルディスカッションにおいて、オバマ政権で高官としてアジア政策を担当し最近退任したカート・キャンベル氏は、安倍氏に対する失望を隠そうとしなかった。安倍氏は「歴史に関する独自の見解」を抱いており、「無用の緊張」を引き起こし、「必要もないのにこの地域を不安定化させている」と指摘した。
また6月26日には、ジョージ・W・ブッシュ政権に非常に大きな影響力を持っていた中国専門家のアーロン・フリードバーグ氏が東京で講演したが、同氏は、安倍氏の歴史観は日韓関係を傷つけており、それは「日米関係にもマイナスの影響を与えることになる」と深い懸念を示した。
フリードバーグ氏と同様にキャンベル氏も、安倍氏の歴史「修正主義的」見解が北東アジア地域を混乱させることになれば、中国に大きな外交的勝利を与えることになる、と警告している。
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