ブラックバイト問題の語られない意外な真実 むしろシワ寄せは店長や社員にいっている

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平賀:長期間続けられる先を探している場合は、自分から電話をして、向こうの声色を聞いたりするようです。電話の対応でスクリーニングしているんですね。昔、店舗の採用担当者は、面倒くさいけれども電話の応募が良いと言っていたんですよ。電話を掛けてきた時の雰囲気で、その応募者が合うか合わないかがその場で決められると言うんですよ。逆に採用氷河期の今は、応募する側も店長の対応などを聞いて、働くかどうかの判断しているんですよね。

常見:電話はプリミティブですが、ミスマッチ解消につながる、と。

平賀:リアルタイムですしね。3回掛けてもつながらないと、もう見切るらしいんですよ。このスピード感が今っぽい。ウェブで応募すると、「待ち」の状態に入ってしまい、「いつ面接の連絡が来るかな」という、その時間が面倒くさいみたいですね。アルバイトの場合、新卒のように複数社にエントリーというものではなくて、一社しか応募しなくて、そこでダメなら次に応募となるので、リアルタイムに確認できる電話のほうがいいみたいです。

面接の時間もポイントです。私は「面接の時間を1時間とってください」とこの本で書きました。でも先程のような9時から23時まで働いているすごく忙しい店長さんからしたら、正直あり得ないのですね。実際どれくらい時間をかけますかと聞くと、だいたいみなさん15分とおっしゃるんですよ。でも15分だと雑な見極めしかできません。

常見:面接は裁判ではないですからね。実はプチ会社説明会的な要素もあります。求職者に面接されているのですね、実は。単に見極めだけでなく、動機づけをするという意味もあるのに。

僕が新卒採用のコンサルをメインの仕事にしていた頃、やはり面接が下手な企業は採れない状態にあって。採れない企業は①全員と会え②面接官のトレーニングをしろ③可能なかぎり面接にかける時間を増やせ――と伝えていました。

平賀:当社では、チェーン店の採用のお手伝いをしていまして。100店舗くらいあるチェーン店の内の、1店舗1店舗の採用率をチェックしてみると、明確に傾向が出てくるんですよ。面接官の腕前と、スクリーニングの仕方の問題です。「どれだけ落とすんだ」という店舗も中にはあります(苦笑)。

常見:可能性にかけて欲しいし、求職者の良いところを引き出して欲しいですね。求職者視点で言うと、バイト先を見極めるポイントで「面接時間にちゃんと15分以上とる職場かどうか」というのは、ありますよね。「面接15分の法則」と名付けましょう。

平賀:絶対そうですね。ある店長さんも、オープニング店舗の募集だったため、15分面接でとにかく20人そろえたのですが、3カ月経って残ったのは3人でしたという。

長年、アルバイトの世界を見続けてきたプロの視点、特にアルバイトを雇う側の論理は参考になる。特に、アルバイトよりも雇う社員の方が大変、面接の法則などは興味深い。次回は今どきホワイトなバイト先などもご紹介。お楽しみに!(後編に続く)
常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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