日本の女子ゴルフはアジアを取り込めるのか 賞金総額「2億円大会」も誕生で、成長に勢い

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男子で2億円大会は6試合ある。「女子より景気がいいじゃない」と思われる方もいると思うが、もともと賞金総額が高く設定されていたことが、経済不況のあおりで試合数を減らした遠因にもなっている。2014年から賞金総額最低ラインの5000万円の試合が福島で行われている。このあたりの金額から試合数を増やしていって、徐々に増額してもらえるような試合づくりが必要になってくるのだろう。

2009年にツアーに復帰した関西オープンは賞金総額5000万円で始まって、2015年から7000万円になっている。「新規大会2億円」とくれば見栄えはいいが、そうそうスポンサーが見つかるとは思えない。青木会長は「1年目は種まき」と話しているので、2018年以降どうなるかだ。

アジアのトップを目指す日本の女子ゴルフ

「男女差」では、賞金総額よりも違いを感じたことがある。LPGA小林会長は2億円になった日本女子プロにアジアからの選手の出場枠を5人分設けたという。「アジアいちばんのメジャー大会にする。グローバル化してアジア各国の選手があこがれる大会になって、日本選手が勝つ。それで、ツアーが強化される」という考えだ。門戸を開くことで、アジアの選手やファンなどのマーケットを取り込んでいくことが将来的な目的なのだろう。技術レベルも含めて日本ツアーの価値を高めるという展望がみえる。

逆に男子ツアーには今年、思わぬ出来事が起こった。米ツアー東京支社の開設を、米ツアーのコミッショナーが来日して発表した。「日本は多くのゴルフプレーヤーがいて、ツアーもある。五輪の開催もあり、一緒にゴルフの発展に取り組みたい」と説明。東京支社は「アジア全体をカバーする」と言いつつ、「米ツアーの日本開催を含めて、まだ何ができるかはわからない」とあいまいさもある。

ただ、日本も含めたアジアに米ツアーのマーケットを広げるのが将来的な目的だろうことは、容易に推測できる。来年には米ツアーの大会を韓国で、シニアの大会を日本で開催することが決まっている。外堀が埋まっていく気がするが、日本の対応は東京支社同様「まだ何ができるかわからない」といったところなのかもしれない。

自分たちからグルーバル化を図ってアジアでトップを目指そうとする女子と、米ツアーのアジア進出に飲み込まれかねない危惧が出てきた男子。賞金総額だけではなく、ツアーの将来像の描き方でも違いがでてきた気がする。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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