日本を「1人あたり」で最低にした犯人は誰か 「世界最高の労働者」を活かせないという罪
それに拍車をかけているのが、「日本型資本主義」という幻想です。多少極端な言い方ですが、「大切なのは利益ではない、合理性ではない。仕事は『道』である。日本の精神性を捨てるべきではない」などと言って、生産性改善に向かわない「怠慢」をごまかしてきました。いい加減な経営をしても、内部からのプレッシャーもありません。外部の不満が募って、たとえば敵対的買収の動きになっても、政府に頼んで規制で守ってもらってきました。事実、日本は1990年代から「世界一株価が上がらない国」になっています。
昭和の時代なら、このやり方でも何とかなっていました。それは人口激増という恩恵があったからです。利益を気にしなくても、人口が増えるから、利益は後から自然についてきました。つまり、日本型資本主義は、単なる「人口激増依存型資本主義」だったのです。人口増加が止まった1990年代初頭に経済成長も止まった事実からも、それは明らかです。
しかし、今は平成です。人口横ばい時代を経て、人口激減時代に入っています。日本型資本主義を支えた基礎条件が変わったのですから、いまだに「日本型資本主義」などといって甘えることは許されません。いま「日本型資本主義」などと言っているのは、まるで「天動説」を信じ続けている人を見たような滑稽さを感じます(この点については、回を改めて詳しくご説明します)。
生産性向上のため、政府は「外圧」となれ
日本政府は、今まではずっと経営者を信じて、プレッシャーをかけてこなかったどころか、「ハゲタカ」などとも言われる外資系金融機関から日本企業を守るという形で、プレッシャーを軽減してきました。人口激増時代には、それで問題ありませんでした。しかし、人口増加が止まった今、この政策はうまくいきません。では、どうすればいいのでしょうか。
私は、政府が公的年金などを通じて「日本一のアクティブ・シェアホルダー」となり、各社に生産性を上げるように強制するべきだと考えています。生産性を上げられない、無駄な内部留保を活用できない経営者は、有能な経営者が現れるまで首を切るべきでしょう。
世界一有能な国民を預かっている以上、経営者には仕事を効率化し、生産性を上げていく義務があります。給料を抑えるだけという単純な戦略ではなく、「本物の経営」をするようにプレッシャーをかけるべきです。そのプレッシャーによって、経営者は株価を継続的に上げる経営をせざるをえなくなります。各社が努力をして、生産性を上げます。その努力の積み重ねによって、GDPは増えるのです。
「そんなことをすると、リストラによって失業者が増える」という反論が予想されますが、今や、人が足りないから移民を迎え入れようという、極めて危険な動きがあります。移民にはさまざまなリスクもあります。人が足りないなら、今いる労働者の生産性を上げていくことによって補えばいいのです。こんなに生産性が低いのですから、移民を迎えることを考える前にやるべきことはあるはずです。
極端なことを言えば、今までの日本の経営者は、「経営」をしてきませんでした。激増する人口という恵まれた環境に甘えて、「管理」をしてきただけです。今となっては不幸なことに、それで大成功を収めてしまいました。この大成功の幻想を追うあまり、人口減少時代に求められている経営に気づけないのだと思います。
これからは経営者という立場の人たちには、きちんと「経営」をしてもらわないといけない時代に変わりました。経営者が危機感を持たず、人口減少時代にふさわしい「経営」をしないなら、強制的にでもさせるしかありません。
「アメリカのような極端な利益至上主義は人を幸せにしない」と言われます。その通りです。しかし、アメリカの極端な「利益至上主義」に対する批判を、日本の「利益否定・生産性軽視」の口実にしてはなりません。
何度も言いますが、生産性を高めないかぎり、増え続ける社会保障を維持することも、先進国でトップクラスの貧困率を改善させることもできないのです。アベノミクスの真の狙いは生産性を上げることです。それを意識して、実行に移す以外に、日本が再生する方法はありません。
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