マンション「甘すぎ修繕計画」の恐ろしい末路 「一生賃貸」の方がマシなパターンがある

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日本におけるマンションのストック数は約601万戸あるが、その中で1981年6月以前の旧耐震基準で建てられた建物が2014年の段階で106万戸も存在する。建て替えの検討が必須である物件は多いのだが、2016年4月1日段階で建て替えが実現したのは、227件と圧倒的に少ない(「マンション建替えの実施状況」国土交通省)。

これまでに建替えが実現してきたケースは、敷地に建てられる建物の最大の床面積である「容積」に、何らかの事情で余剰が生じ、それを生かして以前よりも大きな建物を作ることができた場合がほとんどだ。この増加した部分を余剰床という形で売却し、建築費用を捻出する方法が取られてきた。

また、立地条件の良さも、建替え事業を進める重要な前提になる。パートナーとなるデベロッパーの収益の見込みが立たなければ、そうした話も出てこない。「自分たちのマンションも、いつか誰かが現れて、建て替えができるのではないかと、何の根拠もなく思っている人は残念ながらいる」(土屋氏)というが、現実はそうした物件は圧倒的少数である。

長寿命化の大規模修繕でも世帯負担は1000万円

では、50戸程度のマンションで、容積率に余裕がなく、建て替えたあともほぼ同じ戸数にしかならないケースで、解体から新築まで全て行った場合、どうなるか。マンションの規模によってもさまざまだが、都心によくある1戸あたり60平米〜70平米という広さで考えると、解体費、設計費、建築費などを合わせて「1世帯あたり平均3000万円くらい」(同)になるという。

建て替えが難しい場合は、もう一つの選択肢である長寿命化を模索することが考えられる。特に、郊外の大規模マンションや、バスでしかアクセスができない場所は建て替えの需要が乏しいため、早めに長寿命化のための資金を積み立てるという方向に移行していく必要があるだろう。こちらの方針を選択した場合でも、住民はそれぞれ「1000万円程度を支出する」(同)ことになるという。

また、建物の外側だけ綺麗になっても、部屋の中の設備が昔のままというわけにはいかないため、負担はまだ増える。60平米〜70平米のマンションで内装を全部取り払って、給排水、衛生設備などを全て取り替えるスケルトンリフォームをすると、「1000万から1200万ぐらいかかる」(同)。そうすると、建て替えずに長寿命化の道を選択しても、一世帯あたり2000万以下では不足するということになるのだ。

こうした費用負担を前提としながらも、法律に規定された区分所有者の同意を得て前に進めれば、まだよいシナリオだろう。築年数が古いにもかかわらず、出口戦略を見据えて計画的に維持管理をしていないマンションは、こうした物件の価値を維持するための選択肢が、1つずつなくなっていくことになる。

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