なぜトヨタ式片づけは大きな効果があるのか 心理的負荷を軽くしてあげるのがコツ

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自己防御という点では正しいとも言えるこれらの背景により、「ものを捨てられない」行動があるのです。それでは理由が明確になったところで、次は対処法について考えてみましょう。

「しくみ」で心のストレスが軽くなる

1つひとつのものを前に、捨てるかどうか考えたり、逆に持っていなかったことによる責任について考えるのは、結構な負担です。この心理的なプレッシャーから解放してくれるのが「しくみ」です。しくみがあれば、まず、そのつど人が判断する必要がなくなります。そして、万が一問題が発生した場合にも、個人を責めるのではなく、しくみを検証することで問題解決を図れます。一方で、しくみを作るプロセスにおいては、「ものを捨てられない心理」について考慮すべきポイントがあります。

「捨てる基準」の代表は、「いま使うもの」「いつか使うもの」「いつまでたっても使わないもの」です。ここでの曲者は、「いつか使うもの」。「いつになったら、使わないという判断ができるか」という点から考えるのが大原則ですが、前述したような「余裕を持ちたい」「判断から逃げたい」という気持ちが出てきて、「使わない」と判断するのを先送りしがちです。捨ててしまったことで、万が一にでも、自分が責められるのが嫌だからです。

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この問題についてですが、いったん長めの期限で設定しましょう。

本来、「1カ月後まで使わなければ廃棄」でよい場合も、自身の中での心理的抵抗が強ければ、まずは「2カ月後」を目標にしましょう。そして 、「2カ月」→「1.5カ月」のように、徐々に期限を短くしていきます。そうすることで、心理的な抵抗にも対応しつつ、問題の解決も図ることができるのです。定例会議の資料のように定期的に発生するものの場合には、保管期限の短縮が恒常的な保管量低減につながるので、特に有効です。

多少ゆるい目標、基準でも、まずは設定してみることが重要です。どんな内容でも基準があれば、たとえ少量でもそこから外れたものは捨てるという判断をすることができます。最初からムリをして完璧な形にしようとすると、結局何もできないままに終わってしまいます。地道ですが、少しずつでも進歩することが大事。一度決めた基準は未来永劫そのままの形である必要はなく、少しずつ改善していけばいいのです。実際、トヨタでもさまざまな基準がありますが、それも日進月歩で進化しているのです。

岡内 彩 OJTソリューションズ

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おかうち あや / Aya Okauchi

東京大学教育学部卒業。トレーナーや顧客企業への取材を通じて、人材育成のコツや強い現場づくりに必要な要素などの形式知化を進める。

OJTソリューションズ: 2002年4月、トヨタ自動車とリクルートグループによって設立されたコンサルティング会社。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者が「トレーナー」となり、トヨタ時代の豊富な現場経験を活かしたOJT(On the Job Training)により、現場のコア人材を育て、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援する。 本社は愛知県名古屋市。60人以上の元トヨタの「トレーナー」が所属し、製造業界・食品業界・医薬品業界・金融業界・自治体など、さまざまな業種の顧客企業にサービスを提供している。 主な著書に20万部超のベストセラー『トヨタの片づけ』をはじめ、『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『トヨタの育て方』 『[図解]トヨタの片づけ』『トヨタの段取り』『トヨタの失敗学』、文庫版の『トヨタの口ぐせ』『トヨタの上司』(すべてKADOKAWA)が あり、シリーズ累計77万部を超える。

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