「高速バス流」の経営は3セク鉄道を変えたか スタートから1年半、京都丹後鉄道の今

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このように、経営的には敢えて厳しい選択をしているのは、安全を第一としつつ、ウィラー・グループとして地域活性化が事業存続には必要と考えているためと寒竹常務は断言する。数年で結果を出すことが求められる第三セクター鉄道の公募社長では、やりたくてもできないことであろう。また、地元での雇用創出により、若者の都市への流出を防ぐ手段となることで、将来的にも地域に根ざして生活をする家族を増やす効果も期待できる。

さらに丹鉄は、ウィラー・グループでありながら、バスを丹後地方に直通させての誘客をしていないし、丹鉄から乗り継ぐ路線も運行していない。これもまた、地元企業と提携し、沿線を活性化することこそが丹鉄の使命であり、それこそが将来への生き残りの鍵と考えているためという。

実際、同社の企画乗車券をみると、「4社パス」「天橋立まるごとフリーパス」「城崎・天橋立観光きっぷ」「舞鶴・天橋立観光きっぷ」といった観光客向けのものは、京都交通・全丹バス・丹後海陸交通といった地元のバスをはじめ、天橋立では観光船、ケーブルカー、リフトなども利用できるようになっている。

さらに、沿線住民とのコミュニケーションを図る方策として、除雪車の訓練に地元の幼稚園児50名ほどを呼んで楽しんでもらう取り組みを始めたという。園児たちは、この日が楽しい思い出となり、長じては丹鉄を身近な存在と感じ、利用者へと育っていくことであろう。

観光列車好調、利用者数も売上高もプラスに

ところで、丹鉄になってからの実績はどうなのか。

デザイナー・水戸岡鋭冶氏によるお洒落な車両と、地元食材を楽しめることで人気の「丹後くろまつ号」

いまは2年目なので初年度の実績しか出ていないが、その初年度となる2015年度とKTR最終年度の2014年度と比較すると、売上高が102%、利用者数が101.7%とどちらも前年度を上回った。KTR時代は前年度比でマイナスが続いていたことから、まずまずのスタートとみて良いであろう。

なかでも好調なのは観光列車で、目玉のレストラン列車「丹後くろまつ号」が対前年比122%、座席定員制の「丹後あかまつ号」が同108%となったという。このほか、JRと相互乗入れをしている特急利用も好調だったため、前年度比でプラスとなり、沿線人口減少と少子化による地元客の減少分を穴埋めできたという。

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