「高速バス流」の経営は3セク鉄道を変えたか

スタートから1年半、京都丹後鉄道の今

ウィラー・グループは、ウィラー・アライアンス社を中核にして、運輸事業(右側2つ)とITマーケティング事業(左側4つ)を展開している

同グループが事業展開の一環として丹鉄の事業に乗り出したのは、KTRが上下分離の方針を打ち出したからだという。沿線自治体などが線路や駅設備などの「下」を保有し、実際の列車の運行・営業といった「上」の運営を別会社に任せる上下分離方式だが、前例となった三陸鉄道や若桜鉄道などは、第三セクター鉄道としてそれまで運営してきた会社が「上」となり、「下」を地元自治体に譲渡することで成立した。

これに対してKTRは、KTR自体が「下」となり、新たに「上」の運営会社を公募するという、日本初の上下分離方式を採用した。その公募に対し、応募した4社の中から選ばれたのがウィラー・アライアンスだったのだ。

従来、実績が芳しくない第三セクター鉄道が、社長を公募して立て直しを図るケースはいくつもあった。しかし、第三セクター鉄道が「下」となったうえで、「上」の運営会社を公募したのは異例だった。

新規採用で地元の雇用拡大に貢献

丹鉄本社がある宮津に移り住み、陣頭指揮をとっている寒竹常務

丹鉄は、2015年4月の運行開始から社員の養成に力を入れている。現在、社員数は197名だが、そのうち2015年度の採用者が28名、今年度も20名を新卒・中途で採用している。全社員の約4分の1が入社1~2年ということになる。その多くは沿線在住者だが、都市圏からのIターン者もいるという。地方においてこれだけの雇用を新たに生み出した点で、すでに地元に大きく貢献しているといえよう。

もっとも、採用してもすぐに一人前になれるほど鉄道事業は甘くない。KTR時代から長年にわたって安全運行に貢献しているJRのOBの力は今も絶大だ。新規採用によってJRのOBが担ってきた業務を順次任せるようにしているものの、今もJRのOBが53名と新規採用者より多い。また、新規採用が48名なのに対して、JRのOBの減少は19名にとどまっている。

将来へのノウハウ蓄積を見据えつつ、現時点での安全も重視していることがわかるが、これは人件費が大幅に増えていることも意味している。だが、丹鉄としてはこれまでのところ、採算性の改善は次の段階でと考えているようだ。バス事業を通して公共交通事業における安全性の大切さがわかっている企業ならではだろう。今後新規採用者が年々力をつけていけば、将来的には大きな力になることが期待される。

次ページグループのバスは走らせず地元企業と連携
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