会食で自分の上司を「放置」してはいけない 上司は会話に入れず不安を募らせているかも

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そうした話題を受けて、上司はさらに場を盛り上げていきます。かといって、こちらにもきちんと話を振ってくれるので、むこうが「内輪ネタ」で盛り上がっている、という印象もありませんでした。

こうして、彼らの上司が「置いてきぼり」状態になることがないまま、会は盛り上がり、終わる頃に、上司と私たちはすっかり打ち解けることができたのです。

上司を交えた会を開く場合、私たちは本人の社交性を当てにしがちです。しかし、全員が楽しめる会にするためには、本人の努力だけでは限界があります。どのように上司を盛り上げ、その場を楽しくさせていくかは、実は部下の手腕によるものなのです。上司、部下ともに盛り上げていくことができれば、相手からは「チームワークのよい仲の良い会社だ」という好印象が残ります。

一方、自分たちの上司がほとんど喋らずむっつりしていて、部下の方は上司をそっちのけで、全く気をつかっていなかったら「この会社、大丈夫かな?連携が出来ていないのでは?」と思われてしまいます。

もちろん、こうした気づかいができたら、上司からの心象もよいものになります。上司も人間です。部下を売上の数字の多寡だけで見ているわけではありません。緊張を迫られる場で、居心地のよい場を自分に作ってくれるのは、とても嬉しいはずです。

気遣いのできるあなたを、上司もちゃんと見ている

そして、取引先と上司の間にいい関係を築くことができたら、その後の仕事でも大きなメリットがあります。今後、その取引先との間にトラブルが起こらないとも限りません。そんなとき、自分だけの力でどうにもならなくても、上司とその取引先との間にきちんとした関係ができていたら、上司は身体を張ってでも、一緒に難題を解決してくれることでしょう。

さらに、上司が大切なビジネス相手をあなたに紹介してくれることがあるかもしれません。例えば、懇意にしている取引先の社長と食事をするとき、ほかの人も誰か誘ってみようと考え、真っ先にあなたを思い浮かべるかもしれません。人脈というものは一朝一夕に手に入るものではありませんから、あなたは貴重な体験が出来るわけです。

反対に、部下がちっとも気遣いをしてくれなかったら、上司は心の中にもやもやを抱えてしまうかもしれません。仕事上の明らかなミスなどであれば部下に注意も出来ますが、こういう「自分がないがしろにされた嫌な気持ち」は言うに言えない変なしこりとして残ってしまうものです。

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あなたの周りに、「何となくソリが合わない上司」はいませんか?案外、このような配慮のなさが積もり積もって、軋轢が生まれてしまったのかもしれません。

取引先との会食では、ついつい招待する相手のことばかり考えてしまいます。けれども、肝心の身内への気づかいをおろそかにしてしまうと、楽しいはずの会話も弾まず不完全燃焼のまま終わってしまうかもしれません。

さりげなく自分の上司にも気を遣い、「華を持たせる」くらいの意識を持つことが大切です。それができてこそ、出席者全員が楽しむことができ、会の成功につながります。そうするとそれぞれの人間関係が強固になって、今後の仕事の行方にも大きなプラスになるのです。

平原 由紀子 WITH YU代表取締役

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ひらはら ゆきこ

関西学院大学卒業後、一般事務としてOLを経験。その後、老舗広告代理店に16年間勤務した後、2003年、業界最大手の電通と共同出資し、国内外有名ブランドをクライアントとした 広告代理店「株式会社ザ・ゴール」を設立。クライアントとコミュニケーションパートナーとして強固な信頼関係を築き、業界を代表する会社へと導く。2013年、創立10周年を機に退職。現在は、「株式会社WITH YU」を設立し、 ファッション業界を主とした企業のコンサルティングとアドバイスを行う。「手みやげコンシェルジュ」としても活動。著書に『できる人の会食術 仕事ごはん 部下ごはん』(CCC メディアハウス)。

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