地元への就職を希望する傾向が強くなってきた理由として、保護者の存在も見過ごせない。少子化によって、保護者が子どもを自分の手元においておきたい気持ちが強まっているのだ。遠くに子どもを送り出すのは心配で、目の届くところにいてくれたほうが安心との気持ちが強い。さらに子どもも、地元での生活を望む気持ちが強くなっている。
そうした背景から、地元の就職先として、一定程度の採用数がある地方の公務員を希望する割合が高まっている。
4ページ目以降の表は、各大学が発表した2016年卒業生の就職者数状況のうち、「公務員就職者数」が多かった大学をランキングにしてまとめたものだ。「公務員実就職率」は、公務員就職者数を卒業生数から大学院進学者数を引いた数で除した割合。さらに国家公務員と地方公務員の内訳も入れた。公務員には病院、非常勤講師、教員なども含んでいる。
採用活発な教員は公務員人気の受け皿に
就職者数トップは日本大学だ。920人が公務員になり、2位以下に200人以上の差をつけている。公務員への実就職率は7.1%となっており、地方公務員就職者数もトップの838人に及ぶ。公務員に強い大学といえよう。2位は立命館大学、3位が早稲田大学で、その差はわずか7人だ。
早稲田大学は国家公務員が148人で、その内訳は国家公務員総合職が41人、一般職が63人となっている。地方公務員でも東京都職員Ⅰ類が118人、特別区(東京23区)職員が65人。その他にも東京都教員37人、埼玉県教員24人などとなっている。
4位は国立大でトップとなった金沢大学と中央大学が623人で並んだ。7位の愛知教育大学は、当然のことながら教員での就職者が多い。実就職率は66.9%の高率だ。就職したおよそ3人に2人が公務員ということになる。
団塊の世代の大量退職で、大都市では教員不足がまだまだ続いており、教員採用が活発だ。文系の就職状況は改善してきているが、それまでは大学入試で教育学部の人気が高かった。地方自治体の財政状況は厳しいところが多く、新卒採用は厳しいまま。その一方で、教員採用は行われていたので、「形を変えた公務員人気の表れ」と見る教育学部関係者は少なくなかった。
国立大学の公務員就職者が多い理由のひとつに、多くの大学に教員養成系学部が設置されていることがある。6位の広島大学、8位の新潟大学、9位の千葉大学は公務員への実就職率が2割を超えており、金沢大学にいたっては3割を超えている。大手私立大学は卒業生数が多いこともあるが、上位では実就職率10.1%の立命館大学を除けば、ほとんどが10%以下。教員養成系学部の有無が差となっている部分もある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら