米国人女性の5人に1人がレイプに泣いている 温和な好青年がレイピストに化けるワケ
こうした司法制度の構造や実情が、繰り返されるレイプ被害を断つために勇気をもって立ち上がろうとする女性たちの心をくじき、傷つけている。
「レイピスト」の無自覚さ
3つ目は「レイピスト」像の誤解とレイプ加害者の無自覚さの問題だ。
「レイピスト」は恐ろしい凶悪犯や異常犯のように考えられがちだが、実際には、好感のもてる人物や社交的な人、親切で穏やかそうな人である場合もある。内気に見える人もいる。顔見知りによるレイプの米国内随一の専門家と目される臨床心理士、デイヴィッド・リザック博士によれば、レイピストを人格や心理学的プロファイルで特定することは現実的に不可能だという。
リザック博士とポール・M・ミラーが1991〜98年にマサチューセッツ大学ボストン校の男子学生1820人に対して行った研究では、サンプルの6.4%(120人)がレイピストと特定され、そのうちの63%(76人)が一人当たり平均6件近くレイプ事件を引き起こしていたことが判明した。しかも被験者全員が自発的に調査に参加しており、誰も自分をレイピストだとは考えていなかったのだ。仲間内でもレイプなどしない善良な人間だと考えられていた。
とリザックは語る。
無自覚なレイピストが、訴追されることなく、罰を免れつづけることで、レイプ被害は繰り返される。そして被害者が続々出るにも関わらず、その真相が語られ、明るみに出ることを阻む社会構造が存在している。
果たしてこの"悪循環"はアメリカに限られるものなのか。そして、私たち一人一人の個人と無関係なことなのか……。目をつぶりたくなるくらいの被害者たちの”叫び”が詰まった本書『ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』を読めば、考えずにはいられなくなるはずだ。
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