ハルキ小説の「英語版」はこうやって生まれた 「1Q84」「ねじまき鳥クロニクル」訳者が語る
海外では村上春樹氏の著作の代表的な翻訳者として名高い、ハーバード大学名誉教授・ジェイ・ルービン氏が『村上春樹と私』を上梓した。ルービン氏は11月上旬に来日し、東京・南青山の3rd_PAGEで「村上春樹と私とノーベル賞」と題する出版記念トークイベントを行った。
メディア報道の少ない村上氏についての知られざるエピソード、ノーベル賞にまつわるこぼれ話、翻訳時の苦労など、なかなか聞けない同氏の本音を余すところなく語り尽くした、熱いセッションの一部を抜粋してお届けする。(聞き手:井坂康志)
ボブ・ディランは現代の吟遊詩人
――ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞しました。村上春樹翻訳者としてどうお感じになりますか。
ボブ・ディランがノーベル文学賞に値するのかどうか、少し不思議に思いました。彼の歌は嫌いではありません。とくにDon’t think twice, it’s all right(邦題「くよくよするなよ」)という曲は、自分でギターを弾いて歌うくらい好きですね。詩としての力は確かにあるでしょう。そうでなければ、これほど世界中の人に愛されるはずがないですから。ボブ・ディランが「現代の吟遊詩人」と言われるのもわかる気がします。
――村上春樹さんとの出会いは?
私が村上さん宛てに手紙を送ったのが最初です。自分がこれまで夏目漱石の『三四郎』などを翻訳してきたこと、村上さんの短編小説が大好きであり、作品の翻訳をさせてほしいというお願いの手紙でした。
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