泣くな小泉進次郞!農協への「要請」で終わる

農業村の抵抗に挑む青年代議士の闘い<後編>

しかし、進次郎にとっては、タイミングが悪かった。2014年の農協改革では、農協法の改正を行い、その実施状況を踏まえて5年後にさらなる改革を行うかどうか、検討することとしていた。このため、今回の提案は、農協法を改正するのではなく、農協に”要請”するという形をとることになった。

そもそも農協の権能は農協法で決められているので、農協法を改正し、全農には資材販売を行わないよう規定すればよかった。それができないために、要請という形をとったことがかえって、自主的な組織である農協の業務に国が介入するのは適当ではない、と反論を受けてしまった。規制改革会議の提案に、自民党農林族は強硬に反発、進次郎は政府と党との板挟みに悩まされることになった。

結局、高い価格の原因となっているとされた商品の数の多さを減少させるため、農協に取扱品目数を減少させるように求めることにした。また農協法の改正ではなく、農協に数値目標を記した年次計画の策定・公表を求め、これを農林水産省が定期的に点検するという。つまり今回も、農協の「判断・裁量」に任せてしまったのである。

生乳の流通自由化も中途半端に

なお、今回決定された「農業競争力強化プログラム」には、農協以外の部分も含まれている。

生乳の集荷団体については、今まで指定された農協連合会(指定団体)以外を通じて生乳を販売する生産者には、バターや脱脂粉乳向けの加工原料乳に対する補助金は交付されなかったが、生乳の需給調整に参加することを条件に、こうした生産者にも補助金が交付されることになった。これで加工原料乳向けの比率の高い北海道には、ホクレンの独占が脅かされるようになるかもしれないが、比率の低い他都府県の生産者や指定団体は影響を受けない。本質的な政策変更ではなく、バター不足が起きなくなるようなものでない。

結果的に進次郎は、農協票の動向を気にせざるをえない、自民党農林族の抵抗に遭った。農業改革は簡単にはいかないということを身をもって体験したことだろう。米シリコンバレーの投資家は失敗した企業家をより高く評価して投資すると言われる。進次郎は失敗したわけではない。足踏みしただけと考えればよい。資材価格が米国だけでなく隣の韓国に比べても極端に高いことを、世間一般だけでなく農業界の中にも周知させたことは、進次郎なくしてはできなかった大きな功績だ。資材価格を安くするための農協改革にはいくつかの途がある。

父の小泉純一郎元首相の郵政改革は長年検討してきた案だった。1年程度で牢固な農政のアンシャンレジームを解体できるとは思っていないだろう。進次郎の挑戦は始まったばかりである。  (敬称略)

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