「特別永住制度」は見直すべき時期に来ている 法改正による「新たな付与」は必要なのか
しかし最近になって、彼らの特別永住を認めるべく、再入国期間を過ぎても再上陸まで引き続き日本に在留していたとみなすとする法律をつくる動きが始まった。冒頭で述べたわかりにくい法案名「平和条約国籍離脱者等地位喪失者に係る日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特別法の特例に関する法律案」を巡る各党の動きがそれだ。
確かに人道上の配慮として、法の保護から漏れた二十数名の救済は必要だろう。しかし、そもそも「特別永住制度」自体がこれからも存続すべきものかどうか、再考する時期に来ているのではないか。
在日韓国人朝鮮人差別の一因に
特別永住制度については、橋下徹前大阪市長が2014年に廃止の検討を提唱したことがある。この制度が在日韓国人朝鮮人差別の一因になっているというのがその理由とされている。
すでに述べたように、「特別永住権」は一般永住権よりも保護が手厚いように見える。しかし実際の生活について、果たして「優遇」されているといえるのか。確かに一般永住者は懲役1年に処せられると強制退去の対象だが、特別永住者はそれがない。だが普通の生活をしていて、それは「恩恵」といえるのだろうか。
しかも、特別永住権の廃止を訴える反対派が「特別永住権者のみが社会保障の対象となっている。これは"在日特権"だ」と主張しているケースがあるが、それは事実ではない。外国人に生活保障を認める1954年5月8日に出された旧厚生省社会局長通達(「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」)は、一般外国人に広く及んでいる。
そもそも日本に居住するうえでの「恩恵」を考慮するなら、最善策は帰化することである。日本の法制度は生来の日本人と帰化による日本人を区別せず、参政権も等しく与えている。
政府は戦後の一時期、日本に在留する朝鮮半島出身者に国籍を選択させる制度とすることも検討していたようだ。たとえば1949年12月21日の衆院外務委員会で、「台湾人や朝鮮人等の日本にいる者の国籍はどうなるのか」との佐々木盛雄委員の質問に対し、政府委員の川村松助外務政務次官が「講和条約が決定しなければ決まらないが、めいめいの希望に沿うだろうと思う」と答弁したことがある。
海外諸外国を見ると、在留者に国籍を選択させている例も多い。
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