「上島珈琲店」は普通のカフェと何が違うのか コーヒーブームの中で狙う独自の価値とは?
さらに、できたてのおいしさを感じてもらうため、店内のキッチンでのひと手間にこだわっている。たとえばバタどらは温めてバターを溶かしてから提供するそうだ。また宇治の老舗の抹茶を使った「抹茶生姜ミルク」も、注文を受けてから一つひとつ生姜をすりおろして提供している。
このように、“究極”と言っても過言ではないほどの季節商品へのこだわりなのだが、あくまで“コーヒーのおいしさを知ってもらうためのツール”という位置づけなのだそうだ。
しかも中には、一見して首を傾げる商品もある。アイスコーヒーにソーダを加えた「冷珈ソーダ」(Mサイズ470円)だ。
「賛否両論ある商品ですが、上島珈琲店の“チャレンジ”の姿勢を象徴する商品として販売し続けています。もちろん、おいしいという自信を持って開発しておりますし、お客様にも徐々に理解され、定着してきています」(丸田氏)
このように、発売後すぐに受け入れられない商品であっても、社の方針として販売を続けることは上島珈琲店ではよくあるという。
「社内では“育成商品”と表現しています。上島珈琲店のコンセプトを守るために意味のある商品であれば大事に育てていこう、という方針です」(丸田氏)
育成商品としてはほかに、フランスのレユニオン島で栽培された希少なバニラを使い、香りで甘みを出した「ブルボンヴァニラの無糖ミルク珈琲」(Mサイズ460円)などがある。
かくもユニークなこだわり商品の数々は、上島珈琲店の大きなアピールポイントとなりそうだ。しかし残念なことに、そのこだわりの一つひとつが、あまり広くは知られていない。「こだわりが多すぎて、すべてを伝えきれていない」(丸田氏)というのが正直なところだ。
SNSでの情報発信も積極的に行う
そのため、ホームページに加えてSNSでの情報提供も積極的に行うようになったという。それらを通じて寄せられる声は「和菓子とコーヒー、意外と合う」「生チョコミルク珈琲を1週間前から待ってました」などと好意的なものが多いそうだ。確かに、あまり大々的に宣伝を行うよりも「知る人ぞ知る」程度にとどめるほうが、マニア心をくすぐるというメリットがある。
また、7店舗で数量限定販売されている1杯2500円の「ブルボンポワントゥ」については10月から12月末までCMで宣伝している。伝説のコーヒーをフランスとの共同で復活させたものとのことで、「コーヒーの文化を守る」というブランドの姿勢を伝える一方で、広告塔の役割も果たしていると言えるだろう。
全国展開の目標としては、スタート当初から変わらず250店舗を掲げている。店舗展開の推移を見ると、2011年の71店舗以降、5年間で114店舗まで増えたものの、現在のところまた110店舗まで減少している。拡大していく過程では、稀少な素材を使った商品の供給体制、また従業員教育とのバランスが難しい。独自の価値観をあまねく広げながら成長していくために、ブランド戦略も非常に重要になってくるだろう。
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