太陽電池、日本企業に逆襲のチャンス トップ企業が相次いで破綻、日本企業に好機到来

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一方、日本企業は生き残っている。最大手のシャープの太陽電池事業は赤字となっているが、京セラ、パナソニック(三洋電機を買収)の同事業は黒字を確保している。

シャープは、結晶系に加えて、薄膜を手掛けたことが重荷となっている。シリコンの使用量が少ない薄膜は、シリコン高の時期には市場の主力に育つと期待された。が、変換効率向上が難しく、シリコン価格が下落した現在、普及は進んでいない。

ここに来て、日本企業に追い風が吹き出した。昨年7月に日本でもFITが導入され、国内市場が急拡大しているのだ。買い取り価格が高く設定されたこともあり、発電事業者は輸入品より、長期運転の信頼性がある日本製パネルを選ぶため、日本でのパネル価格は海外の約4割高で推移する。各社はフル操業でも供給し切れない状況となっている。

昭和シェル石油の子会社、ソーラーフロンティアは13年1~3月期に創業来初めて黒字化。シャープ、京セラやパナソニックも恩恵を受ける。

13年にはFITの買い取り価格が引き下げられたが、事業者が利益を出せる水準であることには変わりない。FITは少なくとも3年間優遇価格が続くため国内市場で利益を確保しつつ、海外では優良案件に集中する戦略を取れる。

とはいえ、「13年は日本市場での出荷量を2倍以上にする」(中国のJAソーラー・ジン保芳会長兼CEO)というように、海外メーカーも日本市場を虎視眈々と狙っており、安穏とはしていられない。

各社は保守まで含めたシステム全体としての競争力強化のほか、海外で太陽光発電事業を手掛けるシャープのように、バリューチェーン全体で稼ぐ体制の構築を急ぐ。

太陽光発電はほかの電源に対し、本当の意味で価格競争力を持つに至っておらず、太陽電池のさらなる進化が求められている。メーカー側からすると、質での差別化はまだまだ可能ということ。世界最高の変換効率を誇るパナソニックのHITなど、日本企業の技術優位性は依然として高い水準にある。本当の勝負はこれからだ。

週刊東洋経済2013年4月27日-5月4日号

週刊東洋経済編集部
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