「トランプ大統領」は高速鉄道計画に吉か凶か インフラ投資の内容がカギを握る

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ワシントンDC~ボルチモア間には、JR東海のリニア新幹線方式による高速鉄道の建設構想がある(撮影:尾形文繁)

現在、この北東回廊線に関しては、ワシントンDC~ボルチモア間をマグレブ(JR東海のリニア方式)で結ぶという構想が進んでいる。

トランプ氏の「国土開発インフラ計画」で巨大な予算が動く中で、もしかするとワシントンDC~ニューヨーク間、あるいはボストンまでの全線を「リニアで」という可能性も十分検討に値する。つまり、「21世紀版のトランプ・シャトルはリニアで」というわけだ。

高速鉄道実現のカギ「規制緩和」に追い風

鉄軌道方式の高速鉄道に関しては、すでに事実上暗礁に乗り上げた形となったフロリダ高速鉄道構想をはじめ、オバマ大統領が「ぶち上げた」多くの線区のほとんどについて、おそらく連邦政府の援助は白紙還元となるだろう。

その一方で、新政権となっても可能性として残るのが、テキサス州のダラス〜ヒューストン間を日本の新幹線方式で結ぶという構想だ。これは他の構想と異なり、純粋に民間プロジェクトで、収益性を真剣に検討する中から出てきたプランだということが理由だ。

このプロジェクトの成否を分ける問題としては「規制緩和」がある。これに関しては政権交代が追い風となるだろう。米国の通常の鉄道車両には厳格すぎる安全基準があり、これがこの高速鉄道プロジェクトの問題となっているからだ。

具体的には、州間高速鉄道・遠距離貨物列車・近郊通勤列車の三者が混在し、定時運行へのモラルが薄い米国の鉄道では「衝突を前提とした重くて硬い車両」が要求されるというバカバカしい基準がある。専用線による新幹線方式を実現するには、この基準の「規制緩和」が必要なのだが、「大胆な規制緩和」を政策として掲げる新政権の登場は、明らかにプラス材料と言える。

いずれにしても、米国は政権交代によって内政から外交に至るまで、大きな方針転換が実行されることになる。今回の歴史的な選挙は、鉄道の将来にも大きな影響を与えるに違いない。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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