2016年11月、当初は泡沫候補と思われたドナルド・トランプ氏が米大統領選に勝利し、衝撃が世界を駆けめぐった。トランプ次期政権の政策が注目を集める中、米国の鉄道政策にはどのような影響があるだろうか。
米国では、2009年以来続いてきたオバマ政権が高速鉄道網推進構想を打ち出す中、今回の大統領選でも民主党のバーニー・サンダース上院議員が高速鉄道の強力な推進を主張し、ヒラリー・クリントン氏の政策にも鉄道網整備は盛り込まれていた。
鉄道に冷たい共和党政権だがプラスの兆候も
次期政権は共和党だ。何と言っても共和党という党は「小さな政府」論であり、税金を投入しての公共事業などには反対というスタンスが基本だ。
さらに言えば、トランプという人は、どちらかと言えば鉄道よりも航空産業に縁の深い人物である。今回の選挙戦でも、専用機を駆使してピーク時には1日に4州を駆け回るというハードスケジュールをこなし、しかも基本的には毎日ニューヨークの自宅に戻っていた。それどころか、1980年代から1990年代にかけて「トランプ・シャトル(別名トランプ・エアライン)」という航空会社を経営していたこともあるぐらいだ。
だが、「プラス材料」になりそうな動きもある。
まず、何と言っても11月9日未明に行った劇的な勝利宣言スピーチで、「国土のインフラ整備」を打ち出したことが大きい。対立を乗り越えて和解を訴えたこのスピーチは、「暴言」を売り物にしていた選挙期間のトーンとは180度異なった落ち着いたものだったことから、欧州から北米の市場が幅広く好感することとなった。
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