新幹線からコンビニまで、JR西日本の今後 来島達夫社長が語る「戦略」と「経営課題」

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――昨年ブラジルの都市鉄道会社に出資した。現地での運行業務を視野に入れているのか。

都市鉄道の運営は現地の会社がやっているので、当社が現地の会社に入って直接運営に携わるということはない。株主の立場で間接的に経営のアドバイスはする。

――現地に人材を派遣するのか?

少しは技術的なアドバイスができ得ると思うが、言葉の問題もあるしその辺はこれからだ。

――将来海外で運行業務を行う意向はあるか?

次の展開を具体的に考えているわけではない。まずはブラジルでいろんな経験を積んでみたい。高速鉄道の分野は他社で海外進出を検討しているところがあるが、当社は近畿圏を中心とした都市鉄道の運行業務のノウハウを海外で活用したい。

ペナルティは問わない

来島達夫(きじま たつお)/1954年生まれ。1978年九州大学卒業、国鉄入社。1987年JR西日本入社。副社長を経て今年6月から現職

──来島社長にとって、福知山線脱線事故が原点になっている?

当時は広報室長だった。2012年から事故ご被害者対応本部長を4年間務め、被害者にお会いしてきた。立場は変わってもそのときの気持ちは忘れない。鉄道の安全を経営の原点に据えて物事を判断し行動すべき、ということをつねに意識している。

事故を起こさないためにハード・ソフトの両面で手を打っている。ソフトの面では、安全に関する情報をより多く収集し、それを生かすことが重要であるという認識の下、今年度からヒューマンエラーに対するペナルティを科さない制度に変えた。社員が報告しやすい環境を整備することで、重大な事故を防ごうということだ。

――ペナルティは問わない制度に改めたことで、現場からの情報は増えているか。

まだ始まったばかり。もう少し時間が立たないと比較の物差しが出てこない。件数が増えたとか減ったとかいうことだけが比較の物差しではない。同じ1件でも以前なら見過ごされていたものを表面に出し、リスクとして認識することが大事だ。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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