もっと極端なグループは、海兵隊の基地は沖縄ではなくグアムに、第7艦隊の基地は横須賀ではなくハワイにすればよいではないか。その場合のアメリカは西太平洋においては、もう主役ではなく「従」の存在で、仮に中国と周辺国との間で紛争が起こった際にも、まずは日本や韓国、フィリピン、ベトナムなどの当事国が中国に対峙せよ、と主張します。そのうえで、あまりに大きくバランスが変わりそうな場合、アメリカの覇権に深刻な影響を与えるような出来事が起こりそうな場合にだけ、アメリカ軍が介入すればよいというのです。
アメリカ軍が沖縄や横須賀を離れるというのは、日本にとってはショッキングかもしれません。しかし、先にも触れましたが、アメリカ人の多くが、なぜアメリカから遠く離れた西太平洋に軍を展開する必要があるのかと疑問を感じています。日本にいるとわからないでしょうが、日本人が感じているほどアメリカ人は中国を脅威には感じていません。もちろん、距離的に遠くてよく理解していないという面は大きいでしょうが、やはり中国がアメリカに攻めてくるなど、誰も思っていないのです。
したがって、尖閣諸島や南沙諸島といった小さな島や岩礁のために、アメリカの若者が血を流すことにはほとんどの人が反対するでしょう。中国と戦争になったらどうするのか。そんな小さな島の紛争に介入するのはまったくナンセンスだと思っているのです。
中国の膨張にどう対処する?
もちろん軍の情報に明るい者は、日本の基地がアメリカ軍のアジア戦略における要の存在であることを十分に認識していますし、日本が駐留アメリカ軍のために多額の費用を負担していることも知っています。
しかし、トランプに支持が集まるように、多くのアメリカ国民は、なぜアメリカはGDPの5%も防衛費に費やさなくてはならないのか、もっと国内の生活を豊かにすることに税金を使うべきだと思っています。日本が1%、韓国が2%、ドイツは1%未満という現実を見ると、アメリカばかりが多額の負担をする必要はないのではないか、と感じているのです。
仮にアメリカ軍がアジアから撤退すれば、中国が勢力拡張するという懸念はあります。しかし、中国の軍事力が増強される中で、それに対抗しようとすればどれだけのコストがかかるかわからない。また、これ以上の軍事支出を増やすことは国民の理解を得ることができない。となると、アメリカは、どこかの時点で、これまでの安全保障の哲学を変えざるを得ず、軍事戦略も大きく見直さざるを得ないという日がやって来ると思います。
それはもちろん、日本の防衛のあり方も変わらざるを得ないということを意味します。現時点において、日本は中国が攻撃を仕掛けてきても、防衛するだけで、中国本土を攻撃する法的根拠もなければ、中国本土を攻撃する十分な武器や能力を持ち合わせてはいません。ですから、そのような事態になった際にはどうしてもアメリカ軍に支援してもらわなければならない、これが現在の日米同盟の基本的な構造です。
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